バウンダリ編 第4章 第02話 装備

 導人はとても緊張していた、横ではまことが監視している。

 今回装備を導人が作成することとなったが、従来品から少し見直しをすると言って実際使っている隊員に改善要望書を出させた。


 すると、男性隊員は特に問題がないようだが、女性隊員は一人ひとり形状に違いがあり、何かの折大事な所がこすれて痛いので、一人ひとり形状を合わせてほしいと要望が来た、これにはまこと達も賛成であったが、試しにまことに合わせ数字だけで作ってみると形状が合わないとか、月に数日サイズが変わるからそれに対応しろとか・・・大量の要望が来た・・・


 ブラじゃあるまいし、そんなに微妙なサイズを大量に準備できるかと導人がぼやいたところ各人に合わせオーダーメードとなった・・・

 目の前には、16人ほどの女性兵士がタンクトップで並んでいる・・・

 横ではまことがにらんでいる・・・

 これは、各自個室で計測しようとしたら、いきなり抱き着いてきた隊員が居たためである。


 実際は、どこかの天才下着職人のように触るわけではなく、魔素によるスキャンをかけその形状に魔法樹脂を成型する簡単なお仕事だ。

 作成したものを、実際当ててもらい不具合を修正する。


 

「なあ、まこと・・・これって3Dスキャナじゃダメだったのか?」

「へっ、ダメに決まっているじゃん、そんなデータ残したくないし」

「俺の頭の中は良いのか?」

「いいんじゃないの? 誰からも苦情は来てないし、一部では崇拝されているみたいよ」

「崇拝? なんで・・・?」


「一度生で、導人君の魔法見ればそうなるって、神々しいもの」


「・・・そうか」


 むだ話をしながら、淡々と作業を進める・・・


「あっ」

 まことが、言った瞬間。

 むぎゅっと、手に感触が・・・慌てて手を引っ込めると本人が付いてきた・・・

「スキャンするために手を上げたけど、1mくらいは離れていたよね?」

 抱きついてきそうになるのを、両肩を捕まえブロックする。

「ぐぎぎっ、なんていう力ですか、手がこっちを向いたからそうなのかなって押し付けました、気持ちよかったです」

「そりゃどうも」


「ひぃ」

 まことが襟首をつかんで引きずっていく・・・

 それを見送りながら。

「次どうぞ」

 と作業を進める・・・


 なんだか、飛田さんを思い出すな・・・



 別室では、引きずっていった兵士をまことが睨んでいる・・・

「装備の調整とはいえ勤務中に何を考えている、言ってみろ」

 まことは引きずって行くときに、相手の名前と階級をリストで見ていた、特殊攻撃M師団発足時のメンバーで、順としては2期生となる、飛田隊の生き残りでもある。

「山内ひいろ曹長、あなた飛田隊のメンバーじゃない、なのになぜ?」


「隊長が亡くなったからです、私も隊長と一緒に50階の救出作戦にいたんです、圧倒的なあの魔法・・・あの奇跡の光景を見たんです・・・ただ隊長がすぐに付き合う宣言して、懲罰までもらって必死だったので、あきらめていたんですが・・・」


「また目の前に現れて、今度は自分たちの隊長で・・・飛田隊長と違って私まだ23だし・・・」


「残念だけど、姉さんたちに後を頼まれた、私が居るから駄目よ」

「聞いてます、みんなで仲良く分けっこしていたって・・・、だから少し私にも・・・」

「本気で言っているの? これを思うと胸が苦しいから言いたくないけど、やっと私の・・・私一人を見てくれるようになったの・・・そこにまた誰かが割り込んでくるなんていやよ」



 ほかのメンバーの装備調整が終わり、中に入ろうかと思ったが、中からまことの声が聞こえる、立ち聞きする気はなかったが、そうか・・・まことにもいやな気持を味合わせていたんだな、下手に仲が良かったから余計につらかったのかもしれない。


 とりあえずノックする。

「入るぞ」


「導人・・・」 「隊長・・・」

「意外とドアが薄いのか、中の会話が聞こえてしまった、すまない、そのうえで山内曹長、悪いが隊の人間と付き合うことはできない」


「これは、わがままで残酷・・・それに隊長としては失格かもしれんが、もうこれ以上見知った人間に誰一人死んでほしくはないんだ、だから精いっぱい守れる人数以上の親しい人間を作りたくない、飛田さんたちのように隊員を逃がす余裕なんて取れないかもしれない、元からの友人や身内を除いて隊の中で序列なんて言うものは作りたくないんだ・・・本当にろくでもない隊長だと思う」


「いえ、隊長なら当然です、作戦によっては死んで来いと、命令することも必要だと習いました、その精神的重圧から自身を守るため、あまり仲良くなるなとも習っています」


「いや、学校で習うそんなきれいごとは良いんだ、実際にはとっさの時にやはり見知ったものを助けようとしてしまうし勝手に体が動いてしまう、それが魔法だとね、巻き添えが大きいことを知ってしまって・・・」


「飛田さんたちが亡くなっているのを見たとき、頭に来てね・・・普通は越えない階層を超えて魔法を撃ったようなんだ・・・76階くらいから120階層くらいまで影響を及ぼしたらしくて、ひょっとすると生きていた隊員もいたんじゃないかとか、あとから追いかけてきていた、まことたちもちょっと間違えれば殺してしまっていたかもしれない、と結構思うことがあって一年くらい周りに人がいるときに魔法を使うのが怖かったんだ・・・身内なら失敗しても許してくれるかな、なんて思いながら行動をしていたよ、ろくでもないだろう」


「いや、くだらない愚痴を言ってしまった、装備の調整はもう君だけだ計測するよ」

 もう近づいてこないよな、スキャンするのに目をつぶらないといけないのが隙になるな・・・

「うっ」

「あっこの野郎」

「隊長私あきらめません、ごちそうさまでした」


「導人隙がありすぎ・・・んっ」


「・・・上書き、しちゃった」

「あいつの装備どうする? 一応調整は終わったけど」

「後で渡すわ、ちょっとぐらい体に合っていなくても文句は言わせないから」

「それと・・・あなたが苦しんでいたのは、そばで見ていた私が理解しているから安心して・・・」


「それにしても飛田さんみたいな子ね・・・ああ・・・それと失敗に巻き込まれても文句は言わないわよ、じゃあ後でね」


「あそこまでしゃべるつもりはなかったんだけどな・・・これが、若さゆえの過ちと言うものか・・・」

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