バウンダリ編 第3章 第10話 追憶
達男たち一団と田上2尉、田村2尉が導人に追いついたのは、そこら中に隊員だったものが散乱している76階だった、いや追いついたのではなく、さらに深い階層から表情を無くした導人が空間魔法を使って隊員達を回収して来ていたのに出会った。
まことが、ただ・・・
「見つけた?」
と聞くと・・・少し時間を置いた後、導人はうなずき
「うん・・・多分」
とだけ返し、また回収を続けた・・・
問いかけに多分と返したのは、2人の状態を認めたくない、導人の心が出した答えだったのかもしれない。
潜るときには気にせず通り過ぎたが70階の扉で以降の上層には隊員は見つからなかった。
小田隊と飛田隊の幾人かずつで12人ほどが無事に逃げ、伝令を果たしたためである。
地上に戻り導人は研究所の地下に回収したものを出し、並べていく・・・その後、その部屋の片隅で大佐に用意してもらったお棺に、なるべく元の形に・・・自分の覚えている姿にして2人を収めていた・・・
後日その日の事はあまり覚えていないと言っていたが、山本大佐と2人でお棺を家族に届けに行った、二人の家族は責めることもなく、連れて帰って来てくれたことを感謝していると言ってくれた、君のおかげで幸せだっただろうとも・・・。
その数日後、2人の葬式は合同でするとなり、大佐と救出メンバー全員それと家族でお見送りをし最後まで一緒だったねとみんなで納得した。
その2日後、他の犠牲者の合同葬儀が行われ、そこでやっと篠田2尉も犠牲になっていたことに気が付いた・・・そういえば・・・篠田2尉が学校の職員室でボソッとつぶやいた言葉を思い出す・・・
「職員室の集合写真があることは知っているが皆あまり見ることはない・・・つらくなるからな・・・」
と、言っていたな・・・こういう事だったのか・・・
その週は各地での氾濫もあり、学校は休みとなっていた、全国で数万人の被害者が出たとのニュースが流れていた。
俺らは、応援要請時以外は4階のトレーニングルームでただ集まり・・・怠惰に過ごした・・・
まことは、それからしばらく食事を一緒に取る以外、導人の部屋に来ない日が続いたが、ひょっこり朝ベッドで横に寝ていた、姉さんたちに悪い気がして遠慮をしていたけれど、逆に姉さんたちの分まで導人の面倒を見ることにしたと言っていた。
ただ表情を見ると、無理をしていることが分かる、導人の部屋のはずだが3人姉妹の私物が、遠慮なく持ち込まれて誰の部屋かわからない状況だから・・・。
家族に返すつもりで連絡はしたが、導人に使ってくれと返答があり、そのままとなっている。
その後混乱の中で月日は流れ、春が来て凜たちが入学、その年の春から大学部、士官学校にも魔法科ができた、高津さんのお兄さん飛海は泣いて喜んだそうだ、本人曰く俺の時代が来たとの事だ。
次の年仲良く導人達が士官学校に進み、わが世の春を謳歌していた飛海を高津〈妹〉と一緒に導人達が絶望のそこに落とし、導人は入学と同時に1尉に昇級し一時的にほかの隊に編入されていた小田隊と飛田隊の生き残りの12人を部下として受け持ち、凜たちも含めて1小隊として受け持つことになった。ほかの隊に比べて少数だが、あっという間に倍の階数である160階を攻略した、それもわずか半年での出来事だった・・・
順調な攻略の途中、2年前の氾濫があった同じ月日・・・一般的言う命日に同じ場所に立ちそして導人は思い出す、2人が居たのは76階の奥、そこには壁に打ち付けられた隊員たちが散らばっていた、その中で光る見覚えのあるおもちゃの指輪、テニス合宿の時にねだられ買ったあの指輪だ、後にちゃんとしたのを買おうとしたが、2人供が記念だから良いのと左手の薬指につけていた・・・
そして2人ともほとんど同じ場所で息を引き取っていた、それを認識し2人を壊した
モンスターを許せない・・・いなくなれと純粋に深く祈った、魔素は宇宙の一方向から流れている、元は宇宙を動かすためのクリスタルのエネルギー、ダンジョンで空間が割れていようともすべてが繋がっている。
そして魔素は導人の祈りを聞いてくれて実行した・・・気が付けばダンジョンの奥に反応があったモンスター、その反応がすべて無くなっていた、二人を殺しダンジョンの奥に戻ろうとしていた双頭の狼も消滅した中に含まれていた、大型のモンスターは魔素だけではなく身にまとう黒い霧が必要で、濃度の薄い上階に来てもある程度すれば深層に戻る。
導人はふと気を取り直し、何とかしなければと、2人を連れて帰るために大事に2人をかき集めて収納し周りも見まわし全部だろうと一応納得したところで、攻略部隊は80階まで行っていたな?となぜか冷静に思い出し、隊が進んだところから隊員を拾い集めながらまた76階のこの場所にもどって来て、さらにもう一度確認し、ようやく周りの隊員を回収しながら上層に戻り始めると、皆が追いついてきた・・・
その時はまことに問われた事に
「うん・・・多分」
と返すのが精一杯だった、でも今は少しはましになったよ、と心の中で二人に報告をする、実際1年前にはまだ、ここに足を運ぶことができなかった・・・
導人はその場所に花束を2つ置くと、静かに奥へと進んで行った、その後ろには小隊の隊員と友人たちが続く・・・
まことはずいぶん何か会話をしていたようだが、そっと、酒を供えてからみんなの後を追った。
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