バウンダリ編 第2章 第12話 思慕

 その人物は、ベッドの上で苦悶していた、心の内ではいろいろな考えが渦巻き、思っては打ち消しまた思ってはそれを否定する・・・

 ただ、思いとは別に、体は身じろぎもせず、ただ横たわっていた・・・

 静かに、涙を流しながら・・・


 何事にも一生懸命な性格で自分の想いを抑える事ができず暴走し、減俸は1月となったが停職3日と始末書の提出という、幹部候補としては許されない懲戒処分をもらってしまった彼女は・・・ 飛田 ほむら(とびた ほむら)3尉 24歳である。


 彼女は中学入学時に、近所に住んでいる同じ学校の先輩に、背が高いからそれを生かすならバレーボールよと、強引に入部させられそれから高校卒業までびっしり部活の日々にどっぷり浸かっていた、158cmだった身長も165cmまでは伸びたがそこで止まり、頑張っても推薦で大学の内定を受けることはかなわなかった。


 家も普通だが、ちょうど2つ上の兄が大学に通っており、大学に行くならバレーで推薦でも貰って授業料免除だといいなと・・・今思えば親としてはつい口にしてしまった冗談だったのかもしれないが、生来真面目な性格の彼女は真に受けてしまった。

 

 推薦を受けれなかった彼女は、行くなら自分の力でと腹をくくり、入学金も必要なく給与までもらえる士官学校大学課程を受験し合格を勝ち取る。

 そこでも真面目にひたすら頑張り、卒業と同時に准尉として陸軍後方支援部隊へと配属された。

 そこで、任務をこなしながら攻撃部隊をうらやましく思い、移動願を提出していた。

 2年がたち3尉への昇進後、部隊長となったが1月後に山本より声が掛かる、詳細は不明だが新設される特殊攻撃部隊への招聘で、断っても構わないと聞いたが二つ返事で受ける事となった。


 5人のメンバーの中に残り研究所の地下に集められた、その時の説明でメンバーに対し特殊能力を与える、ただし初めての試みで実験的な目的もあり確実に力を得る事は出来ないかもしれないと注意を受けた。

 だが彼女は、攻撃の第一線で任務ができるとそれのみを考えていた、これは、中学生時代から部活とはいえチームのレギュラーメンバーになることだけを考え、邁進してきた影響があったのかもしれない。


 実験?は成功して全員が力を得た、それは今までおとぎ話の中でしか聞いたことがないような力で完全に舞い上がり、世の中に対し自分は魔法使いだとふれ回りたいほどの想いを持ったがさすがに自重した・・・


 その後、力の制御とダンジョンでの力の確認、実行部隊として行動できるうれしさと選ばれた特殊な5人の中で自分の力が・・・自分が役に立っていると満足をしていた。

 一度メンバーが不意打ちを受けケガをしたが、無事にモンスターは倒せたし自身の自信も揺らぐことはなかった。


 それが失われたのは目の前で突入し消えていったエコー小隊・・・それを助けるため突入しアルファとブラボー小隊が突入後、開かなくなった扉・・・日数だけが過ぎていく中で何かが失われ、恐怖が心に生まれてきた、それを彼女自身は理解できていなかったが、周りの隊員が時折口にする、「あいつは彼女がいて、今回の作戦が終わったら結婚する予定だったのに」とか「子供が秋に生まれる予定だったのに、奥さんになんて報告すればいいんだ・・・」と苦悩する声が聞こえ、皆が行方不明になった隊員の安否を心配する中で、ふと自分は恋愛なんかしたことがないと気が付いた・・・


 一緒に待機していた小田3尉にそれとなく話を聞くと、高校時代から幾人かと付き合いみたいなことは有ったと・・・私はそんなことも経験せずに死ぬことになるかもしれないとふと考えた・・・


 それからさらに幾日か経ち、閉ざされていた扉が開いた・・・無線を使い

山本大佐に対応を問い合わせた、カメラを先行させ人間は入るなの命令を受けたときに安堵したが、カメラに映るのは永遠ともいえるただのトンネル、きっと人間が入るのがトリガーになっているのだろうと推測し、小田3尉と相談し直接山本大佐に会い対策を・・・突入した彼らは見捨てないかという、残酷な決断を出してくれないかと少し期待していた、この時にはもう彼女の心の中で恐怖はかなり大きくなっていたのだが、それを理解できない・・・いや・・・理解したくなかったのかもしれない。


 地上に戻り山本大佐に現状報告し意見を窺う、

「そうか・・・」


 山本大佐はそう言ったまま黙ってしまった・・・

 魔法使いの隊員90人と士官の3人、失うには大きすぎる、この計画を山本大佐が主導で進めているため、この被害は目をつむるにしても大きすぎるのだろうと、邪推しながら控えていると、

「ちょっと待ってくれ、心当たりの私のとっておきの戦力と連絡して見る、話が決まったらまた呼ぶから、しばらく休憩を取っていてくれ、ああ外出はしないように、以上だ」

 と言って、部屋の奥に行ってしまった、敬礼を返し退出する。


 軽く食事をとり、外出は出来ないため地下の個室に行き仮眠を取ろうと、小田3尉と久しぶりに自分の名前がかけられた部屋に入る、「この部屋でのことはあまり思い出したくはないわよね」と小田3尉と顔を見合わせる、「まあお休みっ」と言って別れて部屋に入り仮眠をとる。

 

 どうなるのかしらと・・・思いながら、予想以上につかれていたのかすぐに意識を手放した・・・


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る