バウンダリ編 第27話 実践

 今日、部隊と言っても5人は実地訓練としてフジにあるダンジョンの一つに来ている、ここは基本、軍の管理となっており兵の訓練として利用されている、普段と違い封鎖され関係者以外は近接も禁止されている。


 5人は先日共に苦しみを乗り越えて魔法使いとなった、


 篠田 樹  (しのだ いつき) 2尉 24歳

 田村 空  (たむら  そら) 2尉 25歳

 小田 水希 (おだ  みずき) 3尉 23歳

 飛田 ほむら(とびた ほむら) 3尉 24歳

 田上 大地 (たがみ だいち) 3尉 23歳


 仮の呼称として特務M隊とし、将来的には各自の下に人員を配置する予定と聞いている。

 あれから、各自の能力を確認してみると得意な系統があることがわかっている、主として各自得意な系統の威力と連射性を伸ばすことを当面の目標とした。


 山本大佐が全員を見回しながら、

「本日は各自の特殊能力が、モンスターに対してどのくらいの有効性を持つかを確認してもらう、一応標準装備一式は10階層の門までは通じることは確認されているのでそこまでで訓練を行う様に、また結果次第では悲願である門の先への進軍も考慮する事となる、編成だが年長の田村2尉を班長とする、以上」


「ああそうだ、今日はあくまでも訓練だ無理をせずに、状態によっては速やかに撤退すること、では作戦に入れ」


「「「「「はい」」」」」


 速やかに各自、標準装備一式を確認し整列する、田村2尉が前に一歩進み

「訓練開始、ダンジョンへ突入します」

 と宣言し、突入を開始する。


 班長となったが空間把握と索敵が得意なため、田村2尉と火魔法が得意な飛田3尉が先頭で中列小田3尉と田上3尉最後尾が篠田2尉の陣形で突入していく、もともとこのダンジョンは通路が広くはないため二列程度が都合がいい。


「魔法を中心として攻撃し有効性を確認する」

 と、田村2尉が宣言する

「「「「「了解」」」」


「前方100 3」

 ハンドサインが出る、静かに進んでいると3体の子鬼がこちらに気が付かずなにか喚いている。

 止まれのサインと敵を攻撃が指示される。

 敵が3匹のため3人が対応する、田村2尉が空気の塊を撃ち込み、飛田3尉が炎を圧縮した弾を、小田3尉が水を圧縮し打ち出す、問題なく対象に着弾すると胸に大穴が開き対象が消えて結晶が落ちる。

 OKのハンドサインが出て、結晶が落ちた所へ速やかに移動し回収する。


 その後も、問題なく探索は進み魔法は子鬼だけではなく子鬼の上位種や鬼に対しても有効であった。


 このダンジョンは各階層が2~3km程度で8時間後には10階層にたどり着いた、問題の扉の前で休憩を入れている。

 何故か扉の周囲100mほどには鬼たちが近づいて来ない為安全地帯と認識されている、30分ほど休憩し地上に戻り始める。


 モンスターに対しての魔法の有効性は確認できた、地上に戻り報告後、扉への侵攻が現実的となったことで再度準備を整え再進行する予定がもう目の前にある。

 過去幾度も侵攻し武器が通じず敗退を繰り返してきた扉の向こう、自分たちが力を得て人類の希望として力を振るえる、そのことに全員が少し高揚していた。


 地上に向けて引き返し始めたチームが扉から40~50m離れた頃、静かに扉が開いたのっそりと現れた鬼は1匹だが3m程も有り額から立派な角を生やしていた。

 鬼は5人を見つけると、手近な石を拾いなにか面白がるようにそれを投げた。


 石は時速250kmほどの速度で投げられ1秒とかからず班員へと到着する、田村2尉が気が付き「後ろにモンスター」後ろの時点で反転と警戒とするが、飛来物!!土属性が得意な田上3尉が瞬時に壁を作るが突き破り、少し角度の変わった石が田上3尉の左肩をかすめてしまった。

 田上3尉は肩鎖関節と第2肩関節を粉砕され左回転に体をひねるように吹き飛ばされた。

 飛田3尉が炎を圧縮した弾を連続で撃ち出し、少し遅れて小田3尉が水を圧縮し打ち出し始める、田村2尉が攻撃を警戒し篠田2尉が田上3尉の様子を見るが左肩が骨折しているようだ、他の部位は目視では出血もない様なので、左肩周辺部にテーピングを施し固定すると三角巾で左腕をつる。

 振り返りモンスターの様子を見ると、攻撃を腕で回避しているため両手にはかなりのダメージを与えているようだ。


 ここで、田村2尉が攻撃に参加し、不可視の空気の刃を撃ち出す、これは空気に渦を巻かせた状態を保ったままで敵に到達させる必要があり非常に難しい、失敗すると竜巻が出来る。

 見事にモンスターの腕を切り飛ばした、その瞬間飛田3尉の撃ち出した炎を顔面に受け倒れた。


 空中に各自魔法を待機させながら様子を見ていたが、無事崩れるように消滅し結晶が残った。

 一番近くに居た飛田3尉が警戒しながら結晶を確保するため走っていく。


 田上3尉は意識を取り戻し症状を自己判断し、田村2尉に報告をする。

 痛みがかなりあるようなので、携帯しているエマージェンシーキットから、痛み止めを患部と周辺にスプレーし錠剤の薬も飲ませる。


 5分ほどでめまいも収まったようなので、田上3尉を中心に据え前衛2人後衛2人とし出発する。


 途中は予想外のことは起こらなかったが、やはり田上3尉の痛みと発熱並びにめまいが有り休憩を多く取ったため1時間余分に時間がかかった。



 それでも、たった5人という人数で10階までを日帰りで踏破したことは十分快挙であった、銃器も未使用であり山本大佐も十分な結果を出せたと喜んでいた。


 後日扉の周辺状況を確認した所、不定期に中からボス級モンスターが出てきて暴れるという恐ろしい情報が得られた、100m範囲内にモンスターが近寄らないのはボスを警戒してのことであり、謎の安全地帯ではないことが発見された。


 田上3尉も肩の粉砕骨折 再建手術を受け、完治まで6週から9週とのことだったが魔素の体内循環により骨折そのものは2週かからず完治し、リハビリは3日もかからなかった。


 怪我の功名だが山本大佐は、陸軍研究所の所長として最高の情報ばかり得ることができたと喜んでいた。


 ただ、篠田2尉の特性は植物に対して特効で、戦闘においては水魔法が多少有効と分かり多少悩んでいたようだ・・・

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