バウンダリ編 第26話 昔話

 今は体育の授業でソフトボールを行っていた。

 ランナー1塁3塁でセンターに導人が守っている、バッターが打ち少しレフト寄りのヒットだが導人が回り込んできておりボールを取ると、ちらっと3塁ランナーを見た後キャッチャーに向かって遠投した、それを見た友也と達男がやばいと言う顔をして1塁から2塁に向かっているランナーに急ぐように指示をする、バックホームじゃないのか?とランナーは返球を見てそう判断するが、2塁直前で縦に変化し2塁手が捕球そのままベースを踏み1塁へ投球・・・やられた、あのホームへ投げると見せかけた2塁への送球は導人がたまにする技だ今日のはスライダーかな? ボールがでかいから絶対フォークじゃないだろう。


「なあ達男、そう言えば導人があまり本気を出さなくなったのは、いつからだっけ?」

「ああん、そんなもの小学2年だったかソフトボールの返球を受けて、お前が手首を折ったときからじゃないか?」

「導人って昔はガキ大将的な感じで、とんでもなかったよな?」

「そうだった・・・あっあれがあった、妹がお菓子をあげるって車に引っ張り込まれそうになった事件」


「ああ、あったな、低学年の小学生による過剰防衛ってちょっと話題になったな」

「あれが3年生の時だから、あれから大人しくなったんじゃないか?」

「導人あん時はすごかったよな、見た瞬間走り出して・・・結構大柄なおっさんだったけど、足の小指踏みから太ももへの膝蹴り、相手が俯いたら喉にチョップして倒れたら相手の右脇腹に蹴りとか言って何度も口元に薄笑い浮かべて蹴ってたもんな」

「あれだろ、ホントは動きを止めるには心臓打ちが良いけど、心細動起こすと死んじゃうから禁じ手と言ってたやつ」


「ああ、爺さんに習ったとか言って実践した技な、医師監修相手の殺し方ていうやつだろう」

「開爺さんだろう、歴史の闇に隠れ磨かれて来たとかって言って、一子相伝の技だとか言いながら皆に護身術って教えてたのがばれて大人に怒れたやつ、そうそう、警察にも怒られていた」

「拐われそうになって誰かが警察呼んでも、来るまでに十分拐えるって言って大騒動したよな」


「実際あの時は誘拐されずに済んだんだけど、犯人の肝臓が破裂していて問題が大きくなったよな」

「そうだったよ、あれからか導人が大人しくなったのは」

「いやぁー、開爺さんか・・・何もかも懐かしいな」

「いい人だったのになぁ・・・」



「導人オツ、試合終わったのか?」

「何だ観ていたんじゃないのか?」

「ああ、ダブルプレーの後、開爺さんの話になって懐かしいなーって偲んでいた」

「・・・そうだったのか・・・」


「あっでも来週、修学旅行のお土産取りに来るって言っていたよ」

「そうなの?」

「うん、いまイズミに住んでいるから、ほとんど修学旅行に行った先は地元なんだけどね、きっとすぐ近くをバスで通ったよ」

「元気だなあ」

「うん、元気も元気だけど、もう70すぎだけど見た目は40代だからおばあさんが怒こっている」


「やっぱり、お前の家、直系がなんかおかしいよ」

「なんか相伝されているのか?」

「いや? 特に無いけどな・・・あっ護身術は昔習った」

「開爺さんに習った怪しい技で、使用禁止されたやつだろ」

「そうそう、結構便利だよ」

「怖いよ、体格が同じならまず膝をくだけって言うやつだろ」

「まあ、間合いによってだけどね」

「やっぱり怖いよ」



 思い出したけど、口元に薄ら笑い浮かべて犯人が動かなくなってもひたすら蹴り続けていた導人は、今思い出しても怖い、こいつだけは怒らせてはだめなやつだと思う、仲間には優しいんだけどな・・・


 

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