バウンダリ編 第17話 注目

 今日は、昨日とは違い勉強をした、天気も晴れやかで足取りも軽い。

 昨日のように、一歩歩くたびなにかが抜け落ちるような気だるさもない。

 晴れやかだ。


 テストだというのにルンルン気分で学校につく、もともと不得意科目ではなく昨日勉強したときもなぜだかすっと頭に入り、1年からの教科書を読み漁りその後広大なネットの海にもダイブした。


 学校につき、靴を履き替えたあたりから妙な視線と気配を感じる? ふと見ると山本先生がこっちを見ている、

「おはようございます」

 と挨拶をすると、

「おお、おはよう、調子は良さそうだな?」

「ええ」

 と返事をすると、突然近づいてきて、コソッと

「お前、透視とか使えるのか?」

 と聞いてきた

「いいえ使えません」

 と言うと

「テレパシーはどうだ?」

「使えません、なんですか?」

 と聞くと

「いや使えないなら良いんだ、気をつけて教室に行けよ」

 

 いや教室には行くけど何か道中危険があるのか? ・・・ああこの前階段を飛んだっけ・・・

 下から上には落ちないから、躓くのだけは気をつけよう、心配してくれているんだないい先生だ。


 教室に向かってあるき出す、するとその様子を伺う6人の影があった、昨日の話中に声が大きくなり今日の科目の担当教師3人まで増えて都合6人が導人を見張っていた。

「特に変わった様子は有りませんね」

 社会担当の峰先生がつぶやく

「基本的に、深見くんは真面目な子だからカンニングをするとは考えられませんけど」

「突然赤点ギリギリが100点を2教科も取るとなると、疑いたくもなりますよ、ああ確かに生徒を信用出来ないのはだめだと思いますが・・・」


「まあ、試験中も気をつけましょう」


 話が終わり散らばる先生方の動きを、導人は周辺に薄く伸ばした意識で感知していた、一度取り込み頭に霧を集め、今度は霧に意識を乗せる感じで逆に広げていく、するとその意識に触れたものがなんとなく理解が出来る。

 これは先日、SPさんたちを発見したときから、なんとなく訓練をしている。


 教室で座りながら、確認をしていると担任の山本先生が近づいてきた、カバンからゴソゴソと筆箱を出していると、

「おはよう」

 と入ってきた。

 そしていつものように出席確認と国語の答案用紙の配布前に、各自の机を何故か確認しだした。

「どうしたんですか?」

 と誰かが聞くと、

「ああ、昨日机に大作を書いていた奴らがいたからな、一応全員確認することになった」

 皆が一斉に机に大作を書いていた2人を見る、2人は正面を向いて不動状態になっている、ただ右手は、なにかを消している、また懲りずに作品を書いていたようだ。


 やがて納得したのか、解答用紙を配りだすと教室の後ろのドアから国語担当の石川先生が入ってきた、一瞬みんな教室の後ろのドアを見たが向き直る。


 やがて時間を見て「始め」の声がかかる。


 答案用紙を表に向けて、名前を書きつつ問題を流し見る、やはりサービス問題だルンルン気分で回答を進めていく、その様子を斜め後方からツーマンセルでハンドシグナルを使用しながら確認を進める教師が緊張しながら怪しい動きをしていた。


 流石にテスト中に気配察知を展開できる程は導人も熟練しておらず、怪し動きに気がつこくとはなかったが、本人からすると簡単な問題なのでどんどん解いていく。


 導人に気が付かれることの無かった動きも、周辺にいる生徒には丸見えで、後日生徒を信用できなかった教師6人は教頭からお叱りを受けることになる。

 一部の生徒から、試験中の教室で教師が謎の踊りと不可思議な行動をして、それが気になりテストに集中ができなかったというものだ。


 そしてその教師たちの奇行は3時間とも行われた、ただし3時間目の社会担当の峰先生は美人で人気があり一部の男子生徒からは喜ばれたようだ。



 再び担任の山本さん


「テスト中の様子を見る限り、怪しいところはありませんでしたね」

「それどころか一番最初に答案を書き終わってました」

「すごく嬉しそうに回答していたから山を張ったところが、まるっと当たったのでは? そんな印象でしたけどねえ」


「ああ先生方、国語は100点でした」

「100点でしたか」

「生徒が100点取ったのなら喜ばしいことでは?」

「見たところ、怪しいところは特にありませんでしたし」

「それはそうですが・・・」


「理科と社会採点終わりました」

「両方とも100点です」

「全科目100点ですね」


「これ以上疑うなら一人だけ追試になりますけどどうします?」


「うーん・・・」


 その頃・・・職員室の奥にある教頭室で電話のベルがなり始める、それは1度では終わらず幾度も続く、相談している6人の頭上に目には見えないが今まさに雷雲が立ち込めてきていた。

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