バウンダリ編 第16話 試練

 初夏を強く感じる今日、そうこの日太陽は容赦なく輝いて私の身も心も焼き尽くすような姿を見せる通学路、私は・・・ただトボトボとその途(みち)をさまよう様(やう)に歩んでいく・・・歩みとともに何かを喪失するような、その心の隙間をを埋めるように・・・私は心から渇望し心で涙する・・・ただ・・・ああ・・・ただ、指の間からこぼれて消えゆくような貴重な宝石の様(やう)なきらめきを持つ時間が恋しい・・・ん、ほしいの方がいいかな? なぜか言葉の表現についての考察を勧めつつ絶賛現実逃避中。


 やってしまった・・・


 一昨日は、フジの研究所に行ってから少し考えをまとめ、昨日は書いたレポートを元に凛と検証をしていた・・・


 でだ、今日は月曜日、朝から慌てて出たために日程表すら見忘れる暴挙、大失態・・・どこかの偉人が言ったように、認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの・・・なにかに没頭しテストが始まる月曜日を忘れるなんて・・・過ちとして大きすぎる・・・クッ走ろうと思ったがまだ朝日だ。


 トボトボと、教室に入り黒板に書かれた試験日程を確認する、今日が英語と数学、明日が国語と理科と社会ああ、なんていう組合せだ・・・


 英語と数学は分けようよ・・・


 皆は、教科書を見たり各自自習をしている、そうか評価が1学期と2学期の合算だったっけ内申のことを考えると必死になるよな、先週先生がそんな事を言っていたなあぁ。


 前を見ると普段騒がしい友也と達男も机に向かってなにか書いている?んっ?机に書いたら流石にバレるだろ・・・カンペを作成中のようだ。

 えーと、さすがに筆記用具は持ってきたか、慌てたので教科書も何も持ってきていない、認めたくないものだな!・・・まあ良いかなんとかなるだろ、とりあえず寝よ。


「・・・きろ」

「深見、起きろ!」

「ふぁい」

「なんで朝から、爆睡してるんだ、今からテスト用紙を配る、はじめと言うまでは表を見ないように、筆記用具以外は片付けろ、机の落書きは消せ佐藤と鈴木ふたりとも、消さんと配らんぞ」

「せっかくの力作なのに・・・」

「別にいいぞ、消さないなら0点確定、退出ぅー」

「いや消します」

「さっさとしろ」


「よし、そしたら配るぞ」


「んー・・・始め」


 表を返して、問題を見る・・・あれこれ知っている、習ったから知っているのは当然だが、英語がまるで母国語のように理解できる。

 こんなに簡単でいいのか?

 そういや、実力テスト風に1年からのまとめとか内申点用に簡単なサービス問題なのか?


 特に、ハプニングも起こらず終わった、おっと名前は・・・書いてある。


 次の時間、試験が始まる表を見て問題を確認する・・・やはりサービスだ、こうやって内申点を底上げするんだな。

 ※注意 導人の勝手な思い込みです、実際とは大きな齟齬があります?


 名前を確認し終了、学校に来るまではどうしようかと思ったがなんとかなった、明日の3教科は勉強しないときっと試験受けた時に、山本さんにばれて可愛そうな目で見られることになる、真面目に頑張ろう。



 一方担任の山本さん


「深見は頑張っていますね」とにこやかな顔で英語の佐々木先生がピラピラと解答用紙を持ってきた。

「できていましたか、2年の最後は赤点ギリギリだったのですが」

「ええ、文句なしの100点です」

「へっ、100点ですか?」

「そうです」


 山本先生の頭の中でふと、机に力作を書いていた深見の友人佐藤と鈴木の顔が浮かぶ・・・いや深見はせんな。

 いや、でもなにか魔法でも・・・透視か・・・なんてうらやま・・・いやいや。


 深見の答案を見て話をしていると、再び

「いやー、深見は頑張っていますね、何か心境の変化でもあったのかな」

 とやってきたのは数学の斎藤先生、ぴらっと山本先生に答案を渡す。

「数学も100点ですか?」

「ええ、完璧ですね」

「実は、英語もだったんですよ」

「2年の3学期は両方とも赤点ギリギリだったんですがね」

 と山本先生がつまらないことを口走る。

「「えっ」」

「そういやそうだった」

「数学もですか?」

「ギリギリでしたね」


 無言だが怪しい空気が流れる・・・


「でも佐藤や鈴木と違って深見は不正はしないでしょう」

「まあ、一応明日の試験は気をつけて見ましょうか」


 冤罪の疑いは、成績が上がっただけで作られる事がある・・・ああ世は無情なり


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