バウンダリ編 第15話 着任

 週末朝8時50分玄関前に迎えの車がやってきた。

 挨拶をして乗り込む出発するとすぐに、もう1台後ろに付いてきた。


 ぼーっと景色を見ていると先日の探索者協会本部の入り口を通り過ぎフジの山の方に進んでいくやがて広い施設へと入っていく、車は更に奥の方へ進み木に囲まれた建物の正面へ到着した、車から降りるとどこかで砲撃のような音が聞こえる。


 この施設の隊員さんだろうか入り口に待っていた方に、運転していた隊員さんから案内が引き継がれ、建物に入っていく。

 あまり人気がない建物で他の人に合うことがなく、エレベーターに乗り3階に到着なんだかドアが少し違う?部屋の前に行き隊員さんがノックをすると中から「入れ」と声が聞こえた。

 隊員さんがドアを開け、中に向かって「お見えになりました」と言うと「入ってもらえ」と返事があり中へ案内される、「失礼します」と言いながら入ると、先日会った山本さんが立っていた。


 父さんに言われて練習した通り

「今日は、命令書に従い伺いました」

 と言うと

「こちらへ」

 と山本さんが机の前まで進むと振り返り

「先日送った書類の中に就任辞令書があったと思うが、最初に〈申告致します〉と言って書類の内容を読み上げて最後に〈~を命ぜられ、本日着任致しました〉と言ってくれないか、一応決まりがあってね」


「はい、申告致します、元成15年5月20日 深見 導人は特別技能職員[非常勤] 特別士長相等として陸軍研究所勤務を命ぜられ、本日着任致しました」


「深見 導人特別士長の着任を確認、歓迎する、よろしく頼む」

 と手を出してきたので握手する。


「これで晴れて同僚だ、あらあためてよろしく頼む、さて業務内容と言っても深見特別士長に今のところ特に仕事は無いが、特別技術の研鑽と解明がおもな業務だと思っていてくれて良い」

「それなんですが、少し思い出しながらまとめてきました・・・これです」

「見せてもらっても良いかね」

「はい」


「この、霧を意識しながら取り込むというのが基本となるということだね」

「ええそうです、最初に見えたとき無意識でも体に取り込んでいるのが分かって、それを意識的に取り込みを増やしたり止めたりができます、体に多く取り込むと少し体温が上がりそれを今度体の各部を循環させる事ができれば、同じように体の外でも命令することが出来ると思います」


「更に体の中で循環させると身体能力がかなり上がります」

「ほう! 具体的な数字は分かるかね?」

「いえ測っていません」


「ふむ、最初のお仕事だ、計測に行こう付いて来たまえ」


 エレベーターに乗りリーダーにカードをあてB2が押される。

 おおっ、B5まである。

 地上は3階までなのに、研究所だから地下が主なんだ。


 エレベーターを降りると、ドアがあった!!

「ここは、各自認証が必要だから・・・今日身分証明書のカードは持って来ているかな?」

「はい持っています」

「じゃあそこのリーダーで認証して、近づければ大丈夫横にあるランプがグリーンになったら離して良い」


 順に入室し、廊下を進むとトレーニング室と計測室が併設されているようだ、ここでも認証し中に入る。


「木村曹長、彼は深見 導人特別士長だ今日着任したよろしく頼む」

「深見 導人特別士長ですよろしくお願いします」

 と頭を下げる

「このフロアの主任をしています木村 健司曹長です、所長今日は何を?」

「彼の身体能力の計測だ、基本筋力・・・そうだな反復横跳び、垂直跳び、背筋力、握力程度でいいか、それを2回でたのむ」


「深見特別士長、最初は力なしで頼む」

「はい」


1回目

反復横跳び: 46 回

垂直跳び : 62 cm

背筋力  : 153 kg

握力   : 52 kg


「ほう、高校生でも強いほうですね深見くん何かスポーツでも?」

「いえ、特にはしていません」

「ほう、中学3年・・・15歳でこれか」

 木村曹長の目が光った気がした、なんだろう背筋に寒いものが・・・


 15分ほど休憩を入れて再度計測した、

2回目

反復横跳び: 74 回

垂直跳び : 142 cm

背筋力  : 233 kg

握力   : 83 kg


「なんですか・・・これ・・・」

「深見くんどのくらいのレベルで強化したのかね」

「あまり、纏わせると体に無理がかかるようなので、そこそこという感じです、すみません具体的に表せられなくて」

 木村曹長が呆然としているが放っておこう、山本所長?と話を進めよう、あっ! そう言えば所長だった。


「これを、皆が使えると非常に便利なんだが問題は霧の認識かな?」

「ぼ・ 私が見ていることができれば状況を確認し伝えることができますです」

「ああ無理に敬語とか使わなくてもいいが・・・いや練習しておいたほうが良いか、中には頭の硬いやつもいるし」


「まあ、非常に有効なことがわかった、具体的にどうすれば扱えるようになるかを研究してまとめとくれるかね」

「はい」

「当面は、それを君の業務としよう、それと・・・」

「何か、あるん・・有りましたでしょうか」

「いやそっちは必要になった時にお願いしよう」


「良いデーターも取れた、おつかれさん帰るなら送っていこう」

「ありがとうございます」



 帰り際に報告書のテンプレートを貰った、やはり書類の決まりがあるようだ、表紙のセットを貰った、木村曹長はどうなったのか不明だ・・・

 あの人、なんだか怖い・・・

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