バウンダリ編 第12話 平穏

 月曜日重い足取りで学校に向かう、途中で父さんの言った普通通りが頭に浮かぶがやはり周りの反応が気になる・・・


 下駄箱に着き靴を上履きに履き替えて教室へ向かう、トボトボと歩きやがて教室に到着、気合を入れて戸を開ける・・・


 うん、普通だった・・・


 友也と達男がいつもの席から手を挙げる「おはよう」「「おう」」

 友也はこの前より更にやつれて眠そうだどうしたんだろう?


 自分の席に座り、週末どうしていたかを話そうと思ったが、例の守秘義務が気になり話せることが少なく「うん」とか「色々あった」とかいう返事しかできなかった。

 友也が疲れていたのは、右手はだめだったからあきらめ、週末はひたすら己が左手に眠る力の解放を目指し、修行をして闇の深淵を覗こうとしていた? らしい、結構付き合いが長いがたまに言っていることが分からない、本人が言うには常人には理解は難しく理解しようとすると闇に落ちるため危険だそうだ。


 確かお兄さんがいて同じようなことを言っていたから、家庭的の宗教的ななにか修行かも知れない、うん触れないでおこう・・・滝に打たれたりするんだろうか?


 時間が来て先生が入ってきた、

「おはよう」

「「「「おはようございます」」」」


 いつものように、「いない人間は手を上げろ」の質問と連絡事項が数点あったのみだった。


 そういえば、この週末に氾濫の説明会はあったのだろうか? 多分昨日言われたように全てなかったことになったと言っていたのでそういうことなんだろう、触れてはだめな気がして頭の隅に追いやった。


 とりあえずは、来週からの中間テストだ、心配していたより周りも普通だしこの一週間すごく長かった気がする。


 放課後教室から出てぼーっと色々考えながら歩いていると階段のことを忘れていて一番上から足を踏み外した・・・やばっと思い軽く力を入れ踊り場まで飛んだ・・・? あれ距離が短い飛び過ぎた、踊り場の壁に足をかけそのまま三角跳びのように蹴りながら体をひねり踊り場に着地した・・・ああびっくりした、初めて一番上から飛んだ、遊びで飛んだことはあるが5段くらいで結構足に衝撃が来たけど、今は平気だったな壁でワンクッション置いたせいかなと蹴った壁を見てかたまった・・・足跡がくっきりつき、それを中心にヒビが・・・壁って脆いんだな・・・職員室に自首しよう。


 てくてくと職員室に行き先生を呼ぶ、階段を踏み外しそうになり壁を蹴ったら壁が壊れたと言うと何いってんだと言う感じの変な顔された、まあ見に行こうと踊り場まで行くとやはり消えることなく証拠の足跡とヒビがあった。


 状況説明で階段の一番上で足を踏み外し、ちょっと力を入れたら飛びすぎて壁を蹴った、その後無事に着地したと説明したら先生は階段の上下をきょろきょろしていたが、だれか目撃した生徒は居るか? と聞いてきた、いや誰もいなかったですと返事をすると、それなら良い、壁は修理するから早く帰れと追い返されたが誰にも言うなと言われた。



導人の担任:

 

 よもつくにダンジョンの氾濫があり、生徒は導人のお陰で無事だったがその手段として魔法を使った事は報告しなければならず、学校と探索者協会へ報告をした。

 生徒も無事だったため学校に帰り解散したが、すぐに学校へ国家安全局の高橋という人から連絡が入り、40分後には校長と教頭そしてダンジョンへの引率をした教師が集められた。


 会議室には、電話をしてきた国家安全局の高橋さんと軍務省から渡辺さんという方が来ていた、学校関係者を前に高橋さんが口を開く。


「お忙しいところ申し訳ありませんが、ダンジョンの氾濫においてこちらに在籍している生徒 深見 導人くんが魔法を使いモンスターを撃退したというのは本当でしょうか? 引率の先生方回答をいただけますでしょうか?」


「深見の担任で山本と申します、私は生徒たちと一緒に逃げていて、遅れた一部の生徒がモンスターに飲み込まれると思ったら、近くに居た深見が突然立ち止まり振り返ったと思ったら突然水の玉をモンスターに撃ち出し始めたんです」


「あぁすみません、良いですか? 深見くんが魔法を使える話は周知の話だったのでしょうか?」

「いや、その時まで誰も知らなかったと思います」


「他の先生方や生徒で、深見くんが魔法を使ったのを見た方はいますか?」

「いや、あのときは私達の集団が最後の方だったので、生徒20人くらいで他の人間は先に逃げていたと思います」

「その残っていた集団の名前は分かりますか?」


「ああちょっと待って下さい、名簿に印をつけます」

「先生方にはお手数ですが、今から速やかに今回の関係者の家庭に連絡を入れて、詳細な調査が終わるまでダンジョンでの話は他言無用だと探索者協会から通達があったと・・・」

「いや、国から通達があったとしてください」

 軍務省の渡辺さんが口を挟んだ。


「国からの通達ってまずくないですか?」

「いや良い、なにか問題になったらうちが責任を取る、今回は速やかな情報の漏洩を止める事が必要だ」

「じゃあ、すみませんが国から要請があったと通達をお願い致します」


「許可取りして、明日にでも全戸の家庭訪問するか?」

「まあ、早めに動くに越したことは無いですね、電子デバイスは?」

「リスト頂いたら、関係者のSNSまで浚います」

「ああそうだな、引っかかったら関係キーワードで全消去だな頼む」


「ああ、すみません、そういうことで国からの正式要請として関係者・・・先生方も含め今回のよもつくにダンジョンの氾濫について、情報の拡散等を禁止させていただきます、当然深見くんの魔法についても禁止します、これは一応形的には勧告ですがお願いではなく後日書面を持って契約していただきます、契約内容は先程言った情報漏洩禁止で対価は皆さんの保護となります」


「これから先、話が漏れると関係者全員の命が危ない状況になる可能性があります、理解できなくても納得していただく必要があります良いですね? 」


「はあ、分かりました」

 校長が力なく返事をしている。


「ではすみませんが内容を多少修正し、早急に関係者へ国からの情報拡散禁止勧告があったことの通達をお願い致します」




 導人を見送った山本は、ヒビの入った壁を見ながらため息をつくとトボトボと校長室に向かっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る