第32話FBI

「あっ、そうか。美喜の存在をオープンにした方が

 いいかもしれない」

「そうだな。とにかく、今夜みんなで食事をしよう」

「はい、亮は明日日本に帰るそうです」

「そうか、日本なら少しは安全だな」

「はい」


「今夜皆さんを夕食にご招待したいと

中国の劉文明が言っております。都合の良い

方はチャイナタウンのゴールドドラゴンへ

ぜひいらしてください」

「おお、昨日は和食、今日は中華料理

か私は参加させてもらうよ」

ロイは喜んで返事をすると、皆が手を上げた。


その頃亮は美咲と話をしていた

「犯人は見つかりましたか?」

「それが前科者、テロリストはヒットしなかったみたい

 あとはDEAかCIAレベルかしら」

「そうですか」


「でも、車の持ち主は分かったから

そちらを探しているわ」

「スチュアート上院議員の方は?」

「その件で重要な情報が入ったわ」

「はい」


「ここからは電話はまずい。こっちへ来て」

「昨日の警察?」

「FBIの方」

「はい」

亮はFBIと聞いてドキドキして

FBIクリミナル・マインドのドラマを思い出し

ニヤリと笑った


「何笑っているの?亮」

シンディが聞くと

「クリミナル・マインドを思い出しました」

「えっ?」


「シンディ、FBIって何処ですか?」

「ええとダウンタウンの南の方よ」

「ありがとう。では僕は次のところへ」

「はいっ!ランチでも一緒にしようと思っていたのに」

キャシーが残念そうに言うと

「ごめんなさい。じゃあ今夜チャイナタウンで」


亮はタクシーでFBIの前に着くと

美咲を呼び出し建物に入って

部室に捜査室に通されると

短髪でがっちりした男が笑顔で亮に握手を求めてきた


「トム・ブラウンです」

「アキラ・ダンです」

「亮の立場はもう説明してあるから

 上院議員の件を話してもらうわ」

「はい」

ブラウン捜査官はファイルを見ながら

静かに話し出した。

「ダンさん、もう一度昨日の事を話してもらえますか?

 市警の報告がいい加減だったので」

「はい」


亮は車の車種、運転者の特徴、マシンガンの種類を説明した

「ここまで、よく覚えていますね。ましてマシンガンの機種

までおぼえているなんて」

「はい」

「実はスチュアート上院議員は合成麻薬撲滅と

カルト宗教団体の取締り強化を議会で

決めようとしていたのです」


「では、その連中が暗殺を目的に?」

「はい、それを隠すために乱射した可能性があります」

「なんてひどい」

亮は目を閉じて昨日の事を思い出していた

「あっ」

「どうしました?」

「ちょっと思い出したことがあるんですが」


「何でしょう?」

「車がこっちに乱射して向って来る10m手前

マシンガンがジャムしてしまって3秒ほど止まったんです

その時、マシンガンを撃っていた男が『ハリーのやつ』

と言ったんです」


「ハリーですか」

「はい、多分武器の手入れをしていたやつかも知れません。

舌打ちをしていましたから」

「なるほど」

ブラウン捜査官はメモを取った


「その3秒のタイムラグが、スチュアート

上院議員が逃げるチャンスを

作ったのかも知れませんね」

「うん、そしてあなたが居た・・・」


「スチュアート上院議員は僕の

手前2mを左に3m走って

右足の太股に被弾しました、その前に道路に

13発当たっていますから

ジャムが無ければスチュアート上院議員は

亡くなっていたでしょうね」


「そうね」

美咲が同感した。

「それと犯人はM27IARの扱いに慣れていない

可能性があります」

「えっ?どうしてだ」

「M27IARは装弾数が30発なんです。それなのに

20発を逃げるスチュアート議員を追って

1秒引き金を引いてしまったんです」


「撃ちすぎだ」

「だから装弾数が多い軽機関銃を

撃ちなれた男かもしれません

 M249はベルトリンクで100発なんですけど」

「すると・・・」

ブラウン捜査官が体を乗り出すと

「陸軍での経験があった可能性があります」

「うーん」

ブラウンはあまり簡単に推理する亮に対して

いい印象は持っていなかった。


「マシンガンを連射して通り過ぎた後

三人は車から降りて射殺される。その意味は

わかるかな?」

「仲間割れと言うよりミッション失敗されたので

殺されてのではないでしょうか?」

「なるほど・・・」

「それでの三人の身元は?」


「中東系の人間で何者かまだ判明していない」

「わかりました」

「とにかく、ハリーと陸軍関係の

繋がりを似顔絵を参考に

 調べてみましょう」

「はい」

ブラウン捜査官が席を立つと亮は

美咲に囁いた。


「僕、いい過ぎましたかね?」

「うふふ、彼は亮の事を知らないからよ。

その内頭を下げて来るかもしれないわ」

しばらくするとブラウン捜査官が

慌てた様子でドアを開けた

「すみません、美咲、ダンさん。こちらへ来て下さい」

二人はパソコンとモニターがたくさんある部室に通された

そこには20人ほどの人が忙しそうに仕事をしていた


「こんにちは」

クリミナル・マインドのJJのようなブロンドの美人が

挨拶をしてパソコンの前に座った。

首にはオリビアと言うネームプレート

がぶら下がっていた。


「これを見てください」

ブラウン捜査官が手に亮が描いた

絵を持ってモニターを指さした

「この男じゃありませんか?」

「はい、この男がマシンガンを撃っていた男です」

亮はすぐに答えた。


「やはり」

「誰ですか?」

「エリック・ジョーダン。

二年前に陸軍を退役しています」

「どうしてFBIの資料にエリック・ジョーダンが?」

亮がブラウンに聞くとブラウンは返事をしなかった。

「言えるわけ無いわよね」

美咲が笑ってブラウンに言った。


「あはは、その通りです」

「では、僕は帰ります」

「ちょっと待ってください」

ブラウン捜査官が亮を止めた

「はい?」


「お願いがあと二つあるんです」

「二つも?」

「はい、そちらへ」

ブラウンは目の前のミーティングテーブルに

亮と美咲を座らせるとブラウンが女性を呼んだ

「ジェニファーあれを持ってきてくれ」

「はい」


「あっ・・・」

「あっ・・・」

亮と美咲はジェニファーの顔を見て気が付いた。

しかし、ジェニファーはまるで

亮と美咲の接触を拒否する様子だった。

ジェニファーが白い液体を持ってくると

テーブルの上に置いた。


「以前から美咲さんに聞いていたのですがダンさんは

優秀なファーマシスト(薬剤師)だそうですね」

「はあ」

「これと同じ物を作れますか?」

「はい、分析すれば作れない物は無いですね、

違法性の無い物なら」

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