第34話

 すぐにコンコンってノックされて、どうぞって言って、ドアが開いて。






 本当に真鍋先輩が、居て。






 僕はパジャマ姿のまま、どうしたらいいのか分からなくて、立ってた。






「ごめんなさい、連絡するの忘れてて」

「風邪?」

「はい、あの………そうです………。ごめんなさい。せっかく迎えに来てもらったのに」






 ダメ、だ。



 どうしても昨日のあれを思い出しちゃう。






 真鍋先輩のにおい、体温、腕、大丈夫か?っていう声。



 カーーーーッて、顔が真っ赤になる。



 真鍋先輩の顔が見られない。






「ごめん」

「え?ちがっ、先輩のせいじゃ!!ないし!!って、ほら、うつっちゃうから先輩!!ね?」

「そんなヤワじゃねっつーの」






 真鍋先輩が眉毛を下げて、困ったように笑った。



 ピアノを弾いてくれた時に見た、すっごいドキっとした、笑顔だ。






「熱、高いの?」

「ううん、そんなに…………」






 そんなに高くないですって。最後まで、言えなかった。






 だって、真鍋先輩が。真鍋先輩、が。






「結構熱くね?」






 コツンって。



 僕のおでこに。真鍋先輩のおでこを。






 くっつける、から。






 僕は目を思いっきり見開いたまま、固まっちゃうしか、できなくて。






「病院は?」

「もう少し、したら行きます」

「じゃ、もう少し、寝てろ」

「は、い……………」






 おでこをくっつけたまま、真鍋先輩はそう言って。



 離れて。






 僕を支えて、ベッドに連れて行ってくれた。






「病院から帰ったら、連絡くれ」

「え?」

「明日学校行けるかどうか」

「あ、はい」

「明日、金曜日だし」

「金曜日!!」






 そうじゃん、明日金曜日じゃん!!






 思わず頭を抱えた僕に、真鍋先輩が首を傾げてる。






 部活はとりあえず1週間休めと言われた。



 1週間経ったら足の様子を見つつ、部活に顔を出せって。






 明日。






 もしかしたら、真鍋先輩と一緒に学校に行けるのは………明日で、最後?






「ほら、横になれって」

「はい…………」






 ぽんって頭を叩かれて。



 チラッと見上げた真鍋先輩が、すごくすごく、カッコよかった。






「窓から見送っちゃ、ダメ?」

「却下」

「先輩ーーー」






 見送りたいよ。せめて、後ろ姿だけでも。






「寝ろ」

「………はい」

「おとなしく寝てたら、帰りにも寄ってやる」

「本当!?」

「俺が風邪ひかせたようなもんだから」

「それは違うけど!!じゃあ寝る!!」






 先輩が、来てくれる。



 そのためなら僕ずっとおとなしくしてる!!できる!!






 速攻でベッドに横になって、布団を被る。



 ぶっって、真鍋先輩は何故か吹き出して、肩を震わせて笑っている。






 え?ぼ、僕、何か変なこと、言った?






「連絡、しろよ」

「はい」

「じゃな」






 掛け布団を直して、布団をぽんぽんって、あやすみたいに2回叩いて。






「行ってらっしゃい!!」

「行ってきます」






 真鍋先輩は笑って、僕の部屋から出ていった。

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