第32話
真鍋先輩がリュックからタオルを取り出して、びしょびしょの僕を拭いてくれた。
「何で、待ってなかった?」
「遅くなっちゃったから……もう、居ないと思って」
真鍋先輩にされるがまま乱暴にごしごしと拭かれながら、僕は小さく答えた。
ふうって聞こえる、真鍋先輩のため息。
「定期ある?」
「あります」
「俺切符買ってくるから、待ってて」
「はい」
ちょうど大学や高校の下校ラッシュに重なって、駅はすごい人で。
僕は柱に凭れて真鍋先輩を待った。
先輩、僕、本当に分からない。
どうしたらいいの?
自分の気持ちをどこにぶつけたらいいの?
「行くぞ」
切符を手に戻ってきた真鍋先輩に、また、支えられて。
嬉しいのに哀しくて。
木戸先輩の姿が、ちらついて、寒くて痛くて。
真鍋先輩の肩に乗せる自分の手を、握り込む。
「あれ、乗ろう」
ちょうどホームに来た電車に、僕たちは乗った。
電車は激混みだった。
テスト期間中の普段乗らない時間帯の朝の電車ぐらい激混みで、その大半は数駅むこうの大学生っぽかった。
ぎゅうぎゅうで必然的に真鍋先輩とくっついちゃうんだけど、足が痛くて揺れる電車に踏ん張れない。
「こっち、来い」
真鍋先輩が見かねてドア側と変わってくれる。
ドアの横のスペースに凭れておさまって、やっと、落ち着く。
でも、真ん前は真鍋先輩。
近すぎて、顔が上げられない。
駅に着いて、更にその辺りの高校に通う生徒が乗ってくる。
もう超満員電車状態。
「わり」
ぎゅうって。
向かい合って密着する、僕と真鍋先輩。
ほっぺただって、もう、触れてしまいそう。
ドキドキ、する。ドキドキしちゃうよ、どうしても。
ただでさえドキドキなのに。
真鍋先輩、どうして?
真鍋先輩の右腕が、僕の腰に回って。
僕はまるで、先輩に抱き締められているようだった………。
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