第31話

 普通に歩けば駅までは10分ぐらいの距離なのに、足を引きずってるせいか、全然辿り着かなくて、すごく遠くに感じた。






 しかも、雨が冷たい。……………寒い。






 風邪、ひいちゃうかな。



 何やってるんだろ、僕。



 何か、バカみたい。






 もう歩きたくなくて。立ち止まる。






 痛い。






 足も。胸も。



 痛くて、泣きそう。






 真鍋先輩と木戸先輩。



 2人はどんな関係?何をしていたの?






 ぐるぐる回る疑問。ぐるぐる回る。僕の思考。






「昇降口って、言っただろ」

「………え?」






 足元に落ちる雨粒が僕のまわりだけふいに止まって、低い声が聞こえた。






 振り向いたら、そこには、真鍋先輩。






 走って来たのか、息が、弾んでる。



 こわい、顔。怒ってる、こわい顔。






「ごめんなさい」

「歩ける?」

「………うん」






 こわくて顔が見られなくて、僕はまた俯いた。






 どうしたら、いいんだろう。






 真鍋先輩が隣に来て、僕の腰に腕を回そうとするから、僕は思わず、身体を捩って、逃げた。



 その瞬間に走る足の痛みに、よろける。






「危ないって」

「だって先輩が、濡れちゃう」

「いいよ」

「ダメです」

「いいから」

「だって」

「うるさい」






 よろける僕を支えてくれて、そのまま腰に腕を回される。






 うるさいって。






 少しキツい言い方に、僕は、唇を噛んだ。






 無言で…………歩き出す。






 だって、木戸先輩と、何かしてたじゃん。



 あんなの見せられたら、声なんて掛けられない。



 邪魔しちゃダメでしょ?覗いちゃダメでしょ?



 だったら先に帰るしかないじゃん。



 なのに、真鍋先輩は、不機嫌で、こわくて。






 駅に着くまで、僕たちはずっと、黙ったままだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る