第29話
「いただきまーす」
僕が真鍋先輩の隣に座って、木戸先輩の隣に友弥、友弥の隣に透が座って、3人で手を合わせる。
先輩2人はもうほとんど食べ終わっていた。
「木戸先輩は部活何やってたんですか?」
カレーを食べながら、友弥が木戸先輩に聞く。
珍しいな、友弥が自分から話しかけていくって。
「おれは、帰宅部だよ」
のんびりとした口調で答える木戸先輩に。
「色々スカウトされてたけど、亮平くん結局入らなかったね」
すかさず真鍋先輩が、言う。
「うーん、何か面倒で」
「スカウト?」
「この人滅茶苦茶器用だし、滅茶苦茶運動神経いいから」
「光ちゃんほどじゃないよ」
「ウソつけ」
「んふふふふ」
「俺が手も足もでないのは亮平くんだけだよ」
………うん。何かさ。
チクチク、する。
何かさ、何か、2人で笑い合って、褒め合ってさ。
さっきの女の子たちが言ってたみたい。
……………いちゃいちゃな、感じ。
いちゃいちゃって、男同士に使う言葉じゃないけど。
それが一番、ぴったりって、いうか。
いつも、こうなの?いつも、こんな風に、さ。
って、どうしても、テンション下がっちゃって。
大好きな唐揚げにも、テンションあがらなくて。
「新井、くれ」
「え?」
「その唐揚げ」
「え?」
やり場のないチクチクとモヤモヤで思わずブスって箸で刺した唐揚げを指差して、真鍋先輩が口を開けた。
「新井ちゃん、あーんだって」
ものすごい楽しそうに、木戸先輩が笑って。
あ、あーん?
「あーん」
真鍋先輩も、自分で口を指差して。
「ど、どうぞ」
刺した唐揚げを、真鍋先輩の口に入れた。
真鍋先輩は、何の躊躇いもなく唐揚げをぱくって食べて、もぐもぐしながら、サンキュ、うまいって、こめかみを掻いてる。
えっと、だから、箸、さ。
間接……………。
いやいやいやいや。
ぶんぶんって頭を振って、思考中断。
ここで深く考えたら、顔が赤くなる。だからやめよう。
「好きなの?唐揚げ。弁当にも入ってなかった?」
「あ、はい。好きです」
「光ちゃん、良く見てるねぇ」
「ちょっとうるさいよ、亮平くん」
やっぱりすごい楽しそうに、木戸先輩が真鍋先輩に言ってて。
何だろう、木戸先輩がよく分からない。
でも。
たまたまでも、真鍋先輩が僕のお弁当を見てたことに、嬉しいって、思った。
「あ、雨、降ってきた…………」
「本当だ」
「今日は筋トレかーーー」
「うわ、最悪だ………」
雨。
降ってきちゃったんだ。
ラッキートランプは、雨でも大丈夫傘はいらないって、出た。
たまたま落ちたトランプには駅まで歩こう、って、書いてあった。
自転車が、良かったな。
自転車で、また真鍋先輩に手袋を貸して、そして。
背中から、ぎゅって。
「新井、傘、ある?」
向かい側で木戸先輩と透と友弥が何かの話で盛り上がっている。
3人で何か言って、ゲラゲラ笑ってる。
そっちに聞こえないようになのか、真鍋先輩がちょっと小さく僕に聞いてきた。
「持ってないです」
「俺、あるから」
「え?」
「前に持ってきて置きっぱなしのが」
真鍋先輩を、見た。
こめかみを掻く、優しい、顔。
「傘、入ってけ」
ドキドキしてドキドキしてドキドキして。
唐揚げの味なんて、さっぱり、分からなかった。
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