第27話

 体育が終わる頃にはすっかり空が曇っていた。






 一段と、寒そう。






 何か、僕の心とリンクしてるみたい。



 さっきの木戸先輩の言葉が、僕をチクチク刺してる。






『そろそろ返してくれない?光ちゃん』






 ウソだよって、言ってたけど。

 返してくれない?って時の木戸先輩がすごく真剣な顔で。



 ………びっくり、した。






 返せって、言われても。



 真鍋先輩は僕のものじゃないよ。



 それに僕が………。



 僕が勝手に好きな、だけで。






 屋上にお弁当を食べに行った時に見た、真鍋先輩の木戸先輩を見る顔を思い出す。



 僕の知らない、見たことのない、甘い顔で笑ってた。



 亮平くんって。



 亮平くんって……………。






 外。



 雨が、降りそう。






 雨が降ったら、自転車で帰れない、ね。



 僕が真鍋先輩に触れられる、一番一番、ドキドキする、大切な時間が。






 今日は………ないのかな。






 授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。



 ふと思い付いて、リュックからラッキートランプを出した。






 帰り、どうしたらいい?






 トランプをシャッフルして、ひいた。






 ダイヤの2…雨でも大丈夫傘はいらない






 何で。






 こんなどんぴしゃで出るって、このトランプは一体何なんだろう。






 不思議に思いながら、片付ける。






 そう言えば誰から送られてきたっけ?それも分からないや。



 なんて言ったら、ちゃんと確認しろや!!って、透と友弥に怒られそう。







「あっ………」






 箱にしまおうとして、ぼんやりしてたせいでバラバラって、机に散らばって。






 1枚だけ、床に落ちた。






 ダイヤの4…駅まで歩こう






 どきんって。する。



 ちょっと、怖くなる。






 ラッキートランプ。



 あなたを必ず幸せに導きます。






 幸せに導いてくれるって言う、その『幸せ』は、何を示しているんだろう。






 まだ誰も居ない教室で、僕は不思議なトランプを見つめた。

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