第67話 汚名返上!

「いいのよ。それより、勉強の方はどんな感じ?」

栞の母は、部屋の中に座り込んで楽しそうに話を聞いてきた。

「一人でやるよりも楽しくできてますよ」

思ったことを素直に言うと、

「それはよかった。栞、ちゃんとやってるの?」

今度は栞の方に視線を向けて、疑うように聞く。

「やってるよ……」

「栞、ちゃんと教えられてる?」

急にこちらに向けられた、心配そうな視線。これから察するに、俺はさぞ馬鹿そうに見られているんだろう。それを感じ取ってか、栞は

「私が教えてもらってるの!」

怒りを含んだ声で、鋭い視線を母親に向けていた。

「あら、そうなの……。ごめんなさいね? それで、陽太君は勉強できるの?」

少し失礼じゃないか? と思ったが、そこは気にせずに

「人並みには……」

と謙遜して言葉を濁した。

「あら、そうなの。そう言えば、こないだ模試があったじゃない?」

まだ、馬鹿の疑いは晴れてないだろうが、栞の母は表情を変えて主導権を話すことなく、話を繋げる。

「そうですね。それが、どうかしましたか?」

冷静に声を落ち着かせて聞き返すと、

「この子、前回から十番も成績を落としてたのよ」

心配した表情で俺に言ってきた。

「そ、そうなんですか……」

こんな事を言われて、こちらはどう対応していいのか分からず、相槌程度でなんとなく返事をした。

「それで、陽太君はどうだったの?」

この質問のために、模試の話を出して、栞の順位を軽く開示したんだろう。これは、馬鹿の疑いを晴らさねば。そう思って俺は、スマホに入っている模試の結果を画面に表示させて、

「こんな感じです……」

そう言って、控えめに差し出すと二人は途端に目を丸くして、

「「全国一位!?」」

綺麗に声を揃えて、大きな声でそう言った。

「今回はすごく運がよくて。山カンが見事に当たりました」

あどけなく笑て言うと、栞の母は現実に戻ってくるために首を横に大きく振って、さっきとは違う視線を俺に向けてきた。

「頭が良いのね、陽太君。栞に、ちゃんと教えてあげてね?」

「はい。頑張ります」

笑顔で返すと、栞の母は安心したように笑顔を浮かべて、お盆を持って部屋から出て行った。

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