第62話 動揺

 俺は勉強していた手を止めて、栞とのメッセージ画面を見つめていた。

『あのさ、明日の勉強会なんだけど……』

その文章から二分の時間が流れていた。これは、俺が何か送るパターンなのか? そう思いつつも、もう少しだけ待っていると栞から送られてきたとは思えないメッセージが画面に表示された。

『私の部屋でやらない?』

つい、右手に持っていた麦茶の入っていたグラスを落としてしまいそうになった。目を強く擦り、もう一度メッセージ画面を確認する。そこには確かに、

『私の部屋でやらない?』

そう表示されていた。

「待て待て……。部屋? しかも女子の?」

俺の思考回路はショート寸前。女子の部屋に入るなんて、一体いつぶりなんだと頭を抱え、柔らかいベッドに勢いよくダイブした。

 ここでお気づきの方も多いと思うが、俺は祐希を"女子"だと認識していない。理由はすごく簡単で"女子"とゆうよりも"ペット"とか"小動物"みたいな表現の方が、なんとなくしっくりくるからだ。

 栞のメッセージが来てから、五分ほどが経った。さすがに返信をしなくては、と思って

「俺は良いんだけどさ」

「栞の方は大丈夫なの?」

強がって、相手を気遣うように返信をする。それに、純粋に疑問だった。女子の部屋にどこの馬の骨かも知らない男子と二人きり。親御さんも多少なりの心配をするだろう。それなのに、本気であんなこと言ってるのか? 考えているとすぐに既読が付いて

『私の方も大丈夫だよ?』

あっという間に返事が来た。

「マジか……」

俺は必死に頭を回転させた。女子の部屋に二人きり。しかも女子の方からの誘い。これってそうゆうことなのか? 恋愛経験が皆無の俺には、何が何だかわからない難しい返事だった。

「あ~もう! どうしたらいいんだよ!」

スマホに向かって強く愚痴を零して、枕を強く殴った。

「ふぅ……」

ヒートアップした思考をクールダウンさせて、冷静に考えてみる。

 誘いだろうが何だろうが、こっちがその気にならなければいいんだ。あっちがその気なら、それに乗っかって……。

 悪い方向に進みそうな思考を止めて、そこを根こそぎ切り取る。

 ただ勉強をするだけだし、何が起こるわけでもないだろう。栞の家にはいつも軽自動車が留まっているし、父さんか母さんが家にいるんだろうから、あっちもヘンなことはしないだろう。

 結局そう結論付けた俺は

「わかった」

「じゃあ明日は栞の家ね?」

そう落ち着いて返信をして、仰向けになって真っ白な天井を見つめた。

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