第57話 持つべきものは友
それから月日は流れて、あっという間に期末試験の時期が訪れた。ここまでの期間、祐希が栞に何かを仕掛ける素振りもなく、ただ平穏で、楽しい日々を送っていた。
「テストかぁ~。マジでやばい……」
これがテスト期間になると亮太と浩介の口から放たれる定型文。二人は、はっきり言ってバカである。亮太は見た目通り。浩介に関してはクールな雰囲気とのギャップに最初は驚いたもんだ。
まぁ、二人ともバカだってことは自覚してるんだろうが、勉強にエネルギーを使えない呪いでもかけられているかのように、全く勉強をしようとしない。故に、テストでは毎回下から数えたほうが早い順位を取り、まぁ、なんとかなんとか赤点は回避している感じだ。
「お前らさ、毎度のことなんだから少しは学習したら?」
そんな二人に呆れ顔の雄哉が口を出す。雄哉は、雰囲気に反してまあまあ頭がいい。俺ほどじゃないけど、毎回、学年の10番以内に入るくらいだ。
「そりゃあ俺たちだってさ、テスト終わって三日間ぐらいは勉強しないとって思うさ」
「でも、その三日を過ぎると面倒になるんだなぁ、これが」
二人はそう言うと、互いを見て大爆笑していた。
「それで、今回は何がヤバいの?」
そんな明るい空気を切り裂くように、冷たい声で訊く。まぁ、教科が絞られることを期待してたわけじゃないが、一抹の望みを持って二人を見ると、
「「全部」」
二人はきれいに声を合わせて、まっすぐに俺の目を見つめ返してきた。
これが、テスト期間になると毎回起きる。テスト期間が来る度に俺と雄哉は二人の勉強に付き合い、遅くまで勉強を教えるという重刑に一年の時からずっと処されている。
「期待してなかったけど、がっかりだわ」
「だな」
俺と雄哉は顔を見合わせて、二人で静かに頷いた。
「でさ雄哉」
俺は雄哉の肩に腕を回して、亮太たちに背を向けた。
「なんだよ」
「あのさ、火曜と木曜は二人を任せてもいいか?」
小さい声で、浩介に交渉を持ちかける。
「は? せめて一日にしてくれ」
「それは、無理。栞と約束したんだわ」
「いや、そんなのより友情だろ?」
そんなのって……。浩介の言葉に少し心を揺さぶられたが、
「先約だし、しっかり仲を深めといた方がネタばらしのリアクション期待できるだろ? 誰かのせいで半減しそうなんだからよ」
嫌みを含めてにやりと笑うと
「分かったよ」
雄哉は渋々、首を縦に振ってくれた。
「さすが我が親友!」
俺は二人にも聞こえるように言い放って、二人の方を振り返った。
「じゃ、とりあえず栞のとこ行ってくる」
「そっか。じゃ、またな」
「おう」
三人に手を振って、俺はいつものたまり場の屋上を後にした。
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