第50話 裏切り
「用事ってなんだろう……」
加藤君の事が気になって、窓の外を見ながらボソッと呟くと、
「久保さん」
聞き覚えのある可愛らしい声が後ろから聞こえてきた。
「あ、野田さん……」
振り向いた先には、野田さんの不気味な笑顔。つい言葉の最後が弱くなってしまう。
「珍しいね。一人でまだ残ってるなんて」
「あの。加藤君、用事があるらしくて、教室で待っててって……」
「そーなんだ。じゃあさ、ちょっとお話しようよ!」
野田さんはそう言うと、前の席の椅子をこちらに向けて、ふわりと腰を下ろした。
「ねー、久保さん」
野田さんが私の机に両肘をつけて、いきなり話を切り出してきた。
「な、なに?」
野田さんの目は柔らかく弧を描いているのに、その目の奥に深い闇を感じる。そんな不気味な笑顔を前に、つい言葉がごちゃごちゃとなってしまった。
「陽太さ~。罰ゲームらしいよ」
野田さんは私の顔を舐めまわすようにじっくり見つめて、とても楽しそうにそう言った。
「ど、どうゆうことですか?」
野田さんの言葉は足りなくても、なんとなくの予想はついた……。でも、どうしても信じたくなくて、私は震える声で訊き返す。
「だ~か~ら~。陽太は雄哉たちとのゲームで負けた罰ゲームで久保さんと付き合うことになったらしいよ~」
不気味に垂れる目尻。楽しそうに弧を描く唇。私を嘲って、見下すような口調。全部に、言いようもない怒りを感じた。
言葉にならない声が、二人きりの教室に響く。
「どう? 今の気分は?」
追い打ちをかけるように、野田さんは俯いた私の顔を覗き込んで憎たらしくそんなことを聞く。
「悲しいよね? 苦しいよね? 辛いよね? すっごくイライラするよね?」
心がもういっぱいいっぱいで、私は憐れまれてるのか、嘲笑されているのかさえ分からなくなってしまっていた。そんな時、教室の後ろの扉がガラガラと音を立てて開いた。
「祐希。なんでここにいんだよ」
怒りを含んだ呆れの声。その声の持ち主は、当の加藤君だった。
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