第49話 不在

「祐希のやつ。呼び出してなんだよ……」

俺はスマホに表示された文章を読み返して、落胆の気持ちを吐き出した。

『放課後、屋上で待ってます』

『遅刻厳禁! 遅れないように!』

「なにが遅れないように、だよ」

屋上の扉を開けて数分。約束の時間はとっくに過ぎてるのに、祐希が来る気配は一向にない。苛立ちを通り越して、呆れの感情が胸に湧いてくる。

「はぁ……」

その暗い感情を溜息と共に吐き出して、フェンスに肘を掛けてグラウンドの方に視線を向ける。黄緑色の桜の葉が、五月の陽をキラキラと反射させる。そんな美しい光景。それを汚すような、運動部の野太い掛け声。でも、奴らが汗を流す姿を見てると、特に嫌な気はしない。むしろ、枝葉と共にキラキラと輝いて、風景に馴染んでいるようにも見えてしまう。不思議なもんだ。

 そんなことを考えて、祐希が来るのを待つ。けど、やっぱり来ない。

「んだよ……。遅刻厳禁って……」

あいつ、遅刻厳禁の意味分かってるのか? もう呆れすら通り越して、笑けてくる。「ま、祐希だし仕方ないか……」

またこうして甘やかしてしまうのは、俺の悪いところだ。そんなことを思いつつも、厳しく言ったからといって改善される気配もしないから、飲み込むのが最善だろう。

 俺は今日の祐希の遅刻も呑み込んで、グラウンドを駆けまわるサッカー部の姿をぼんやりと見ていた。

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