第46話 いつもの昼休み

 その日の昼休み。俺はいつも通り、中庭で栞と二人で弁当を食べていた。

「栞の弁当って、いつも美味そうだよな」

久保の真っ白な手の中にある柔らかい黄色の弁当箱。その中に入っている彩り豊かな食材たち。対して俺の手の中の黒の弁当箱は茶色一色。違う色と言えば、白米と気休め程度のレタス一枚……。隣の芝は青いなんて言葉があるけど、俺の弁当と栞の弁当を比べたら隣の芝は真っ青だ。それくらい栞の弁当が美味そうに見える。

「そう、かな?」

栞は照れているのか頬を赤らめて、恥ずかしそうに俯く。

「どうしたの?」

栞に尋ねると、栞は少し口ごもって

「お弁当、自分で作ってるから。褒めてもらえたのが、嬉しくて……」

一段と頬を赤らめて、小さくそう言った。栞の照れている横顔。間違いなく可愛らしくて、造形美すら感じる横顔なのに、あの日生まれた心の反発心が感情にブレーキをかける。

「栞すごいな。俺の母ちゃんよりも料理上手いかも」

「そ、それはないよ!」

否定しながらも嬉しそうに笑顔を作る栞。まんざらでもない表情だ。

 ――かわい……。そんなわけない

「あ、雄哉だ」

栞を見ている視線の先に、雄哉の姿が見えて俺は思考を遮るように声を上げた。

「お~い」

雄哉を呼び止めようとした時、雄哉の奥に祐希の小さな体が見えた。

「おっと、これは邪魔になるな」

あの二人なら気を遣う必要はなかったかもしれないけど、なんとなく気が引けて上げていた手をゆっくりと下ろした。

「あの二人。最近よく一緒にいるよね?」

「まぁ、そうだね」

「付き合ってるのかな?」

栞は恥ずかしそうに俯いて訊く。

「わかんない」

「何か聞いたりしないの? 幼馴染みと親友なのに」

栞はキョトンとして純粋に聞いてくる。

「二人の事は二人の間でって思ってるから、詮索はしないかな。それが親友だし、幼馴染みだろ?」

「陽太君は優しいね?」

「そうかな?」

栞の柔らかい笑みと、『優しいね』の一言にまんざらでもない声で返してしまったけど、

「そんなことないよ」

すぐに表情は普通の笑顔に戻って、落ち着いた声でそう返す。その後はいつものように推しトークに花を咲かせながら、楽しい昼休みを過ごした。

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