第45話 疑惑

 季節は少し流れて五月半ば。校庭の桜の木もすっかり葉をつけて、穏やかな日差しにその若緑色を輝かせていた。

 五月ともなり、栞と付き合い始めて大体一か月くらいが経った。俺たちの関係に、特に変わったことはなく、あの後も二回デートを重ねて、程よく仲を深めた。


「おはよ、陽太」

窓の外を眺めていると、浩介の声が横から聞こえてきた。

「おう、浩介、亮太。てか、雄哉は?」

「今日も祐希ちゃんと登校だってよ。ほんと雄哉のやつ最近、祐希ちゃんと親し気だよな」

亮太は自分の席に荷物を置きながら、つまんなそうにそう言う。

「確かに。いつも一緒に帰ってるよな、あいつら」

浩介は珍しく羨望の気持ちを前に出して虚空を眺めている。

「陽太は何か聞いてない?」

「いや、何も」

言われてみれば、雄哉と祐希が二人で行動しているのを最近よく見かける。登下校や昼食、休み時間。隙あらば二人は一緒にいる。

「付き合ってんのかもな!」

亮太は悔しさを吹き飛ばすように大きな声でおちゃらけて見せる。

「マジか。じゃあもう、済ませたのか……」

浩介は、今度は肩を落として恨めしそうに呟く。そんな浩介の背後から

「アホ」

と浩介の頭を軽く叩いて、件の雄哉が会話に加わった。

「お、雄哉。おはよう」

「おう」

荷物を適当にしまいながら、亮太に返事をする。

「それでさ、どうなんだよ」

恨めしそうに浩介が雄哉に尋ねる。

「どうって?」

はぐらかすようにぎこちない笑みを作って、雄哉は聞き返す。

「だから……。お前ら付き合ってんのかよ!」

亮太が半ギレで雄哉に訊く。いつもの雄哉ならテンション上げて返すのだが、今日の雄哉はやけに落ち着いていて

「付き合ってないよ。俺さ、委員会に入れられたじゃん? その付き合いで一緒にいるだけ」

首の後ろを軽く掻きながら、静かなトーンで返す。

「そっか。良かった……」

安堵の表情を浮かべる浩介。

「んだよ、つまんねぇ」

悔しそうにしてたくせに、そんな嘘を吐いて拗ねたように口を尖らせる亮太。二人は雄哉の嘘に気づいてないみたいだ。

 雄哉がウソを吐くとき、こいつは決まって首の後ろを掻いて声のトーンを落とす。さっき亮太の問いに返したときも首の後ろを掻いていたし、落ち着いた声で返してたから、今のも嘘。となると雄哉は祐希と付き合っている、もしくは違う理由があるのかもしれない。

「ま、そうゆうことだから」

そう言って笑う雄哉の表情は、いつもより固く見えた。

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