第42話 えがお

 ゆっくりと時間をかけて、大切に大切に陽太が作ってくれたスイーツを食べ終えて

「ごちそうさまでした」

そう言って手を合わせると、陽太は

「おそまつさまでした」

そう言って私が使っていたフォークとスプーンを片付けてくれた。

「それじゃ、俺はこれで」

少し軽くなった保冷バックを持って、陽太はスッと立ち上がってすぐに私の部屋から出て行こうとする。

「待って」

反射的に陽太の制服の袖に手が伸びる。

「ん?」

歩くのをやめて、陽太は私をジッと見下ろす。

「なんでスイーツ作ってくれたの? それに、なんでもう帰っちゃうの?」

陽太の足元を見て、呟くようにそう言うと、

「まぁ、スイーツは祐希を泣かせちゃったからってところ? それで、なんで帰るかってのは」

陽太はそこまで言って、私の前にしゃがみこんで

「祐希の幸せそうな笑顔が見れたから」

そう言って、私の頭に優しく右手をのせてふわりと笑った。この世のどんな言葉を使っても言い表せない程の笑顔に、私は声を出すことも出来なかった。

「それじゃ、そうゆうことだから。じゃあな」

頭の上に置いた手を離して、陽太は部屋から出て行った。

 陽太が帰ってしばらくしても、私は動けなかった。動きも、思考も。なにもかもが止まってしまっていた。ただ、その停止した頭の中にさっきの陽太の笑顔と、柔らかい声だけがくっきりと焼き付いていた。


『祐希の幸せそうな笑顔が見れたから』


何度も何度もこの言葉が頭の中に繰り返される。

「陽太……」

ようやく頭が動き出して、私はベッドになだれ込むように倒れた。頭の下にある枕を胸元に抱き寄せて、この感覚をここから逃がさないようにする。

「陽太。大好きだよ……」

ひとりぼっちの部屋で、空しく私の声が反響していた。

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