第41話 へたっぴなウソ
いつもの倍くらいの時間がかかって家に到着した。
「ただいまぁ~」
だらけた声でそう言うと、母の柔らかい声がリビングから返ってきた。
「はぁ、疲れた疲れた」
そう言いながら階段を上り、部屋の扉を開けると、
「よっ」
私の部屋でいつもの私と同じくらいにくつろいだ体勢でいる陽太の姿があった。
「な、なんで」
さっきのことがあって、陽太の顔をしっかり見れない。嬉しい気持ち、ボヤボヤした安心感。それと同時に収まりかけてた怒りの感情と、冷たい喪失感がいっぺんに心を埋め尽くす。なんか変な感じ。
そんなの全然わかってない陽太は、だらけた口調で
「これ、作り過ぎたから持ってきた」
陽太は丸い形の天板の上に乗ったかわいくて美味しそうなスイーツが乗せられていた。
「わぁ~!」
「祐希、好きだったろ? イチゴ」
陽太の分かりやすい嘘。
――『好きだったろ?』って言ったら、嘘ついたって言ってるのバレバレだよ。
でも、その優しい嘘がすっごく嬉しくて、暗い感情はどこかに居なくなっていた。
「いただきます」
荷物を乱雑に下ろして、陽太の目の前に座って手を合わせる。
「どうぞ、召し上がれ」
優しく微笑みかけてくれた陽太に、ぎゅっと胸が締め付けられる。イチゴとチョコレートとカスタードクリームのパイ。私の大好きなものが詰まった最高のスイーツを私は慎重にほおばった。
「ん~、美味しい!」
頬に両手を当てて素直な感想を口にする。
「それはよかった」
その表情を見て、柔らかく表情を緩ませる陽太。陽太の笑顔が大好きだなぁって、改めて思った。
「陽太が作るスイーツは世界一だね」
「そうかもな」
ちょっと褒めると調子に乗って乗っかってくる陽太も、すごく愛おしかった。
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