第33話 真実

「なに、あの子……!」

陽太の前から去った後、私は校舎裏に隠れてお腹の奥の憤りを発散させた。

「久保栞って幽霊さんでしょ? どうしてそんな子が、陽太の隣にいるの? 陽太の隣は、私じゃなきゃいけないのに……」

ぶつぶつと独り言ちりながら、私は足早に教室に戻った。

「どうして……」

授業が始まってからも、このムカムカが収まることはなく、ほとんど授業の内容が頭に入らないまま、残りの二時間が終了した。

「ハァ……」

大きなため息を零すと、同級生たちの騒々しい会話の中から、陽太と幽霊の楽しそうな笑い声が聞こえてきた。

「あいつ……!」

憤慨を少し収めて席から立ち上がり、私は二人の後を追った。

 学校を出た陽太は、笑顔で幽霊と会話して、わざわざ幽霊を家まで送り届けた。幽霊と別れるとき、陽太は私には決して見せてくれない笑顔を幽霊に向けて、こちらに戻って来た。

 ――なんでなの、陽太……

悲しくて、寂しい気持ちが心を支配する。そんな姿を見られるわけにもいかなくて、私は咄嗟に家の塀に身を潜めて陽太を見送り、再び陽太の尾行を始めた。

 さっき歩いた道を戻って、学校の前に差し掛かった時、

「お疲れ~!」

と、正門からいつもの三人が楽し気に陽太に声を掛けた。

「まぁ、疲れちゃいないけど」

「てめ、この!」

亮太が陽太の頭をワシャワシャと搔きまわす。

「てか幽霊さ、めっちゃ綺麗になってたよな?」

「だよな~」

男子四人のトークに聞き耳をたてながら歩いていると、聞き捨てならないことを雄哉が口にした。

「でも結局、罰ゲームなんだし。夏祭りまでの付き合いだろ?」

「まぁな」

雄哉のその言葉にそう言って笑う陽太の顔がはっきりと見えた。

 ――なんだ、罰ゲームか

安心した半面、このまま罰ゲームの期間が続けば、陽太の心をあんな奴に奪われかねないという危うさも同時に感じた。

 ――これは、やるしかない……

心の中で独り秘かに決心して、私は少し遠回りになるように道を選んで帰宅した。

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