第31話 自慢のカノジョ

 そんなこんなで迎えた月曜日。俺はいつもの時間に家を出て学校に向かった。いつもの分かれ道で浩介や亮太たちと合流して、昨日のテレビの事とか、ゲームの事とか、のんびり話しながら登校していた。

「それでさ、どうだったのよ。土曜は!」

全員がうずうずしていたんだろう。雄哉の声に、全員の輝く視線がまっすぐ俺の元に集まる。急なカットインで驚いてしまい、咳き込んでいる俺に亮太は、

「これは、最悪だったパターンか?」

と笑いながら一番先に校門を通った。

「そうかもな」

それに続くように浩介はそう言って校門を通り、雄哉は同調するように笑って二人に続いた。

 ――そんな。最悪なわけ

と心の中で思いながらコンクリートを見つめて校地に入ると、前の方がやけに騒がしく感じた。

「あの子、めっちゃかわいくね?」

「色白だし、清楚な感じがヤバい……」

前に立ち尽くす男子の間を通って浩介たちを追う。

「おい! 陽太! あの子めっちゃ可愛いぞ!」

強い衝撃と、大きな亮太の声を受けて俺は咄嗟に顔を上げる。亮太や、男子生徒たちの視線の先にいたのは、紛れもない僕の"彼女"だった。

「だろ?」

俺は、少し自慢げに顎を上げて三人にそう言った。

「なんで嬉しそうなんだよ!」

普段、鋭いツッコミをしてこない浩介が珍しく声を大にしてツッコむ。

「いや、だってあれさ……」

栞の名前を呼ぼうとした時、

「あ、加藤君」

栞の方が僕に気づいて、ひかえめに手を振りながらこちらに小走りで向かってきた。

「おはよ」

「お、おはよう」

お互い控えめに挨拶をして、三人の前に横並びになる。

「加藤」

くん?」

三人の頭の上に、クエスチョンマークが描かれたモクモクが実際に見えた気がした。

「紹介しよう! というか、知ってると思うけど俺の、彼女です」

いいだろう! そう自慢したくなって、胸を張って顎を上げる。

「いやいやいや」

「この子が幽霊なわけ……」

「ない、だろ……?」

現実を受け入れることができず、ショート寸前の三人を見て、僕はクスっと小さく笑って

「じゃ、行こうか」

栞にそう言って、二人おなじペースで歩き始めた。

「まじで?」

「あれが、幽霊?」

「マジか。負けときゃよかったかな……」

そんな三人の会話を聞いて、高笑いしてしまいそうなのを我慢して、俺たちは昇降口に向かった。

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