第18話 デート開始……!

 久保といつも歩いている道を一人で歩いて、ようやく久保の家が見えて来た。

「あれ? 誰だろ……」

久保の家の小さな門の前に真っ白な雪のような肌をした、可憐な美少女が立っていた。

「あの」

緊張気味に声を掛けると、

「お、おはよう……」

聞いたことのある声が耳に届いてきた。

「久保?」

まさかとは思ったが尋ねると、目の前の美少女が首を縦に振った。

「ホントに? 久保栞?」

脳内での処理が追いつかなくて、今度はフルネームで尋ねる。もしかしたら、お姉さんとかかもしれない。だとしたら、久保という呼び方でも頷く。いろんな可能性が頭を駆け巡る中、そんな思考を断ち切るように

「うん」

久保の柔らかい小さな声が優しく鼓膜を揺らした。

「マジで?」

「うん……」

目の前にいる美少女はそう言うと、恥ずかしそうに俯いた。

「めっちゃかわいい……」

つい、心に浮かんだ言葉が零れた。

「え?」

久保の声を聞いたとき、我に返ってブンブンと首を横に振って「なんでもない」と言って、久保に優しく微笑みかけた。

「か、加藤君。服、似合ってる……」

慣れないのか、ものすごくぎこちないタメ口が俺に向けられた。

「ありがとう。久保も髪切って、めっちゃかわいくなったね?」

何故か、恥ずかしげもなくそんなことを口走っていた。

「あ、ありがと……」

恥ずかしそうに俯く、そんないつも見ている表情に、俺の心臓は大きく跳ねた。

「そ、それじゃあ行こうか」

「うん」

俺は久保と共にバス停までの道を歩いた。隣に並んでいる美少女が久保だなんて、正直信じられないけど何気ない仕草や、声、背格好。どれも俺の知っている久保栞のものと一致していた……。って、なんで俺、そんなとこまで見てんだろう……。自分の今の思考に疑問を持ちながら、バス停に二人で並んでバスを待った。

「き、今日さ、ちょっとCD買いたいと思ってたんだ。駅前のCDショップ言っても良いかな?」

緊張して言葉が詰まる。隣にいる久保があまりに可愛くて、美しくて、目を見て話すことすら出来ない。

「うん」

短い言葉が返ってきて、会話が終了する。いつものことなのに、今日はなんだか落ち着かない。俺、体調でも悪いのかな……。

 ふわふわした感覚が抜けることのないまま、バスが到着した。僕は久保を先に乗せて、後から自分も乗り込んだ。

 いよいよ、デートスタートだ。前日までと違って、少し楽しみが自分がいることが怖かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る