第二回 軍営中怒気衝天 沙場上血肉横飛

 時は少し遡り治療中の出来事だ。




 医者が簡単に説明してくれた。俺は当然ながら呂布配下の別部司馬という部隊長らしい...。呂布と共に丁原に仕え、呂布に従い今は董卓の陣営に身を置いている。丁原という人物も頭の足り無い無能な上司でもある。軍事手腕はそれなりにあるが、政治的な思考及び手腕に関しては皆無である。だからこそ呂布に離反された挙句殺されるのだ。そう言う呂布も当時最強の騎兵戦術を持っていながら戦略的思考が皆無だから、最終的には追い詰められて敗死したのだ。まぁ、お陰で高順(俺)が道連れになったんだがな。




 そして、現在は初平元年の正月である。行軍中に入れ替わったらしい。どうやら、本当に俺は高順らしい。なんてことだ...。今までの事を整理してみると俺は高順で、并州上党郡出身らしい。そして、丁原に仕え別部司馬になったという。




 呂布と一緒に丁原という人に仕えていた。そして、呂布が丁原を殺したため、一緒に董卓に仕えている。そしてこの戦乱の時代の開幕でもある『黄巾の乱』から六年後の初平元年で現在は陽人という場所に出かけて逆賊討伐に出ているらしい。逆賊は董卓だろう!とツッコミたいが皇帝陛下を手中に収めてる董卓に対してこれは通用しない。だからこそ、喬瑁は三公の文書を偽造し反董卓連合を立ち上げる事に成った。だが、此処で反董卓連合の諸侯について紹介しておこう。




 後将軍南陽太守袁術、冀州刺史韓馥。豫州刺史孔伷、兗州刺史劉岱、河内郡太守王匡、陳留太守張邈、東郡太守喬瑁 、山陽太守袁遺、済南相鮑信、北海太守孔融、広陵太守張超、徐州刺史陶謙、西涼太守馬騰、北平太守公孫瓚、上党太守張楊、烏程侯長沙太守孫堅。、祁郷侯渤海太守袁绍、驍騎校尉曹操の十八人だ。こいつ誰や?と思うくらいに存在感が無い奴も居るが名簿に載ってんだもん!とりあえず、こいつらは洛陽より東から取り囲む様に包囲網を敷いてる。董卓もその配下もアホの集まりでは無い(約一部を除いて)ほぼ前線で指揮して来た人間が殆どで戦略的な部分で絡める人間も少なく頭の悪い奴らがその位置を占めているから董卓軍及び政権はほぼ董卓のマン・パワーで維持出来ていると言えよう。其処で、先ずは東漢朝の代表的なテロリスト集団西涼の馬騰、韓遂当たりに懐柔策で押しとどめて東の頭の固い諸侯を相手にすると言う定石を打つ。




 これによって、敵は南陽、酸棗、鄴の三つに別れた。大本営は袁紹が居る酸棗には気をつけなければならないのは知略に長けた曹操が居り、その名を聞けば烏桓も大人しくなる公孫瓚、公孫瓚が居るという事は同級生兼やさぐれ仲間の劉備も居るという事だ。陽人には袁術を中心に集まり中にはその武勇を華夏全土に轟かせた孫堅の三勢力だ。




 因みに俺は今、陽人に居る…。待てよ...陽人といえば...反董卓連合の頃じゃん...マジかい‼︎




「将軍、将軍!...もう、宜しいでしょうか?」




「うん?あ、ああ、下がってくれ」




 俺はそう言うと一人考えた。まず呂布陣営それぞれの武将洗ってみるか。そういえば、呂布配下に八健将という八人の武将がいて、陳宮という策士がいる。それ以外にも何人かいるな。幼い頃、三国志が好き過ぎて全部調べてみたこともあるから記憶を頼りに探ってみるとしよう。取り敢えずそこに立っているモブみたいな奴に声を掛けてみよう。




「あのー、名前を教えてもらっても宜しいかな?今後色々聞きたいこともあるので」




 と聞いてみたら激しく動揺して俺に平伏してきた。思い返してみたら上司が部下に接する態度ではないわな...。 




「そう、畏まるな。病み上がりでな、お前に聞きたいことがある。」




 兵士は恐れながら話し出した。彼は張五という名の一般兵らしい。そして普段は俺の...じゃなくて高順の身の回りの世話をしているらしい。まぁ、口は悪いがそれなりにある程度の常識はあるようだ。軍内のことを聞いてみた。まずは俺と同格の将軍と、俺の側近などを聞いてみた。




 自分の部下は呉資、章誑、汎嶷、張弘、高雅、趙庶である。率いる兵も七百人いる。別途で増加はされるらしい。要は俺の旗本衆と考えればいっか。そして彼らを呼ぶように張五に声を掛けた。




 しばらくした後六人が集まった。皆それぞれ見舞いの言葉を口にした後、章誑が口を開いた。




「将軍、一度騎都尉様にご挨拶に行かなければなりませぬが宜しいでしょうか?それに我が部隊は常に騎都尉様の先鋒として戦ってきました故、今後の配置もお尋ねしたいのですが...。」




 他も同じ意見のようだ。俺は分かったと甲冑を身に着けた。




「これより、騎都尉様の所に向かう。それまで各々は持ち場に戻るように」




 とだけ言うと、一斉に拱手された。少しばかり嬉しかった。


 我话音刚落、一起拱手退出了。忽然有那么一点高兴。


 そして話を今に戻し、張五を伴い本陣の大きいテントに向かった。その途中に三人がこちらに向かってきた。




「これはこれは、高将軍お加減いかがですかな?風寒と聞いて肝を冷やしましたぞ?」




 卑猥な笑顔で訪ねてくる。おい、お前!悪意しかねぇような顔で聞いてくんなよ。絶対何か企んでるぞとしか思えない。




「まぁ、高将軍も落ち着かれたばかりですし、取り敢えず皆で騎都尉様の所へ向かいましょう!」




 と苦笑いで若い武将がそのまま前に進んだ。




「此度の軍議、宜しくお願いお頼み申す。」




 だ、誰だ…?




 と思ったが高順の記憶を辿ると厭味ったらしいのが郝萌で、若めのが曹性、生真面目なのが張遼らしい。どうしよう、めちゃめちゃサインが欲しい!そんな興奮を抑えつつ、それぞれ対応した。四人ともあれから無言で歩いていると二人の武将らしい人が来た。記憶を辿ると成廉と魏越であった。




「お揃いで何より。総大将の胡文才様が本陣からお越しになられました。お急ぎ下さい」




 顔色の悪い二人である。成廉と魏越がなぜ顔色が悪いかというと、天幕の外からも分かる程の不穏な空気が流れてる気がする。この二人には同情せざるを得ない。




「総大将の大督護の胡文才様と督軍の奉先様が争っておられるのか?」




 答えは聞かずとも分かる。二人とも武勇で鳴らしてきた武人である。片や胡軫は傲慢で短気な性格で、我等の最強好色物欲ゴキブ...もとい主様もプライドはあるからな。張遼、曹性、赫萌の三人はというと立ち止まって状況判断しているようだ。仕方ないと溜息を吐いてしまった。チクショー!行ってこいって事だろ?判ったよ!判りましたよ…行って来ますよ!行けきゃいいんしょ!




 胡軫と言う男を少し紹介すると、演義では程普と十数合やり合って喉を刺されて死んだと言う結末ではあるが、涼州時代より董卓軍の古参武将として呂布より信頼されている。元から豪勇を鳴らして来ただけあって、共にその武勇を評価されて来た牛輔、郭汜、李傕らとは不仲ながらも戦友としては認めていた。だが、新参の呂布に関しては完全に見下していた。其れは自身が古参であり、才覚でのし上がって来た自負から来る自尊心が呂布を認めようとしていない。




「お三方、少々お待ち下され。某が状況を見て参ります。」 




 赫萌が卑猥な笑顔でにやりと笑い、曹性はほっとした表情、張遼は覚悟を決めた顔をしている。お前等なぁ...俺を何だと思ってるの?特に卑猥顔のおっさん!お前許さんからな‼とやり場のない怒りを抑えつつ天幕に入る。




「高順、ただいま参上仕りました。」




 と拱手して挨拶し、席を用意され座り始める。頑張れ、俺!呑まれるな!と内心気合いを入れるが瞬時に無駄だと思い知った。




「高将軍風寒の加減はいかがかね?」




「はっ、お気遣い感謝いたします。しっかり治りました。」




 社交辞令のような挨拶をかわし軍議が始まった。




「さて、例の猛虎などという野盗もどきが攻めて来るが如何いたす?」




 この時の孫堅は正式には烏呈侯に叙されているが、挙兵した頃は現代風に言うとマフィア以上傭兵未満だったからである。長沙太守烏程侯に叙された理由は長沙に賊が蔓延る様になり政府ではどうしようも無くなってしまったので賊退治の報酬として爵位と官職を与えるよ!どうする?と孫堅に打診したところ良いよ!と乗った為である。何時の時代も愛国心が行き過ぎると3パターンに分別される、1つ目は政治、軍人、2つ目は任侠に走る、3つ目はただのバカだ。1つ目は曹操、2つ目は劉備、孫堅、3つ目は文句をたれるだけの存在である。




「どうするも何も打ち破れば良かろう?のぉ?飛将軍?」




「将軍の言う通り敵は当然打ち破りますが、ただ単に戦えばいいという訳でもあるまい?」




「ふん!何ぞ策でもあるのか?」




 ギスギスすなよ...勝てる戦も勝てないやんか...場を和ますかと思った矢先である。




「報告いたします!斥候からの報告によりますと、孫堅軍、明日の正午にはこちらに向かう模様とのこと」




 マジで⁉早くない?待て待て...間に合わないやんか...。しゃあねぇ…一肌脱ぐか!




「恐れながら、申し上げても宜しいでしょうか?」




「うむ、苦しゅうない。申せ」




 この時、うちの上司のこめかみに青筋が...怖い、この人。




「高順は某の配下でありますが?それと高順!貴様は大人しくしておれ!」




「はっ、此度の戦は我らの旗色が若干悪いかと思われます」




「貴様ァ!我が軍の軍心を乱すつもりかぁ!連れ出して斬れ!」




「胡文才!貴様への我慢もここ迄だ!俺の配下を斬りたいなら先ずは貴様の首を斬り落とすぞ?」




 あれ?この人以外と部下思い?見直したぜ!




「待て待て、お二方とも落ち着かれよ」




 華雄さん!超~、人ができてる!結局、胡軍が囮になり呂布軍が外から叩く戦術と決まった。もう人に気を遣うことがないのか、呂布は感情を抑えずに自分の天幕に戻るのであった。




「高順!居るか!」




「はっ!」




 どうしよ。鼓膜が破れそうだ...。顔をちらっと覗いたが機嫌がすごく悪そうだ…。




「此度の戦、どう見る?」




 どうって?と聞き返したいのはこっちだこの脳筋物欲全振り好色ゴキブ...何でもない。




「此度の戦は負けるでしょうな」




「何故じゃ」




「胡将軍、武勇に恃み傲岸不遜にして気が短し。将兵の信頼皆無にございますれば...」




「ほう、それで我が軍は如何する?」




「我が軍の大将は奉先様でございますれば、お好きなようにご采配を...」




「ほぅ…?」




「奉先様の事ですから…、負けるにしても無様な事は有りませんから」




「うむ、皆を呼べ」




「はっ!」




 とプチ作戦会議を開く。赫萌、曹性、宋憲、魏続はそれぞれ洛陽までの退路確保、侯成、張遼はそれぞれ右左翼、成廉、魏越は呂布の護衛として両側につき、そして俺はと言うと陥陣営、遊撃部隊七百人を率いて戦場を撹乱する役目に付いた。




 俺はすぐに持ち場に戻り、作戦の概要を六人の百人長に伝えた。百人隊はそれぞれの方角から攻め込み撹乱を狙う。そして華雄の救出。史実通りの場合、華雄はここで死んじゃう。取り敢えず虎牢関まで敵を引っ張って長安へ撤退するように持ち込めば、呂布が優位に立てるように立ち回れるかにもよるし、呂布が優位に立てば俺の安泰と生存率が上がるわけですよ!曹操に処断される迄ね!まず虎牢関で耐えつつ長安へ撤退する。そして俺は呂布を操って帝を擁立する!




 先ずは、中華最強の傭兵団を迎え撃ち華雄を救出すると言う某ドラマのCTUエージェントもびっくりな激難任務を成し遂げなきゃ行けないのよ…、トホホ。




 全軍を率いて陽人城へと兵を向けるが、其処は既に敵軍の占拠下に有り敵は既に万全な防御態勢を取っていた。




「ふふふ、やはり虎は強いな」




「…、斯様な迄とは…」




「さて、胡将軍如何致す?」




「ぬぅ…!」




 胡軫は内心悔しがっていた。何故なら新参者の呂布を追い落とす機会を逃したからである。戦巧者の董卓すら孫堅と戦う事を避けたがっていた節が有ると胡軫と呂布はそう見た、だからこそ此処で孫堅を打ち破れば董卓政権内で自身の序列は上がると思っていた胡軫と何かと手柄を立てて自身の地位を固めたい呂布のそれぞれの思惑が軍中に不和を齎しているとも言える。




「お二方、せっかく敵さんを目の前にしてるんだ。一戦交えねば相国様のご勘気を被る事になりますぞ?」




「ふん、判っておるわ!華子建、貴様が此度の先鋒じゃ!つべこべ言わずに行って参れ!」




「…、はっ!皆、往くぞ!」




「「ウオォオオオ!」」




「胡将軍、我等は袁術の軍を探って参る故この場にて暫しお待ちを」




「うむ、良かろう。行って来い!」




 呂布は内心では憤りを通り越しほくそ笑んだ。




 お前は死ぬのだから、何を言っても俺は貴様を許せると。馬を常歩で行かせ自軍の方へと戻って行った。




「孝父、文遠!」




「「はっ!」」




「兵をそれぞれ三千預ける、お前らはそれぞれで動け!あとの者は儂と共に動け!」




「「はっ!」」




 俺と張遼が並行して馬を走らせる。




「孝父殿、何処へ?」




「文遠兄!此度は負け戦だが、あ奴らの勢い迄は削げぬ!故に澠池迄の退路確保を願いたい!」




「ならば、貴公は?」




「某は先鋒が多く生き残れるように遊撃に出る!其れ故に退路を確保してくだされ!」




 張遼は驚いた。この男は先が読めているのか?否、見えているのだ!ならば見てみようでは無いか!と意欲を燃やすのだった。




 俺は張遼と別れたあと配下の六人をそれぞれ兵を振り分けて戦うように指示し、俺はあの虎と話をする事にした。勿論、華雄を救出すると言う主旨を忘れずにな!




「皆!さっさと終わらせて帰るぞ!」




「「おう!」」




「張五、お前は華将軍を見つけ出せ!その上で退却させよ!」




「へい!大将!ご無事で!」




「ふっ、ぬかせ!」




 さぁて、初っ端からこの詰んだ盤面をどうひっくり返すかな?難しく考えるのは止めだ!失敗したら死ぬまでよ!明日には明日の花が咲くってな!

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