第59話 七月二日④

 

 ロマン奇行、本名江戸川獏は落ち着きを取り戻していた。本来の目的で、最優先事項であった目論見は水泡に帰し、ゴール目の前に転がってきたサッカーボールをバットで持って空振りするような台無しさだった。人間というものは愚かな生き物で、自分の手の中で行われない事象に直面した時、それが本当は自分の描いていた方向に前進していたとしてもそれを子供のように台無しにしてしまいたくなる。御多分に漏れず、彼もそうだった。

あの夢の実現を防ごうと十三人を選りすぐり、悪を装い正義をなそうと生まれた集団は、正義をなす意義を失い、異議なく悪となり果てる運びとなった。勝手にスパイよろしく敵側から解決策を見出そうとした結果、勝手に闇落ちといった具合である。

 そうは言ったものの、その『明生社』と名付けられた集団の本拠地であったダークウェブにあったページは、ハッカーの享楽によって使い物にならなくなっている。でも、彼は一つ、バックアップの方法を持ち合わせていた。これこそ怪我の功名としか言えないものの、断固大家族が独断で作ったアカウント『明生社』が生きてくる。元々のブランディング的に、多少直接的な発言でも違和感のないという性質上、市民と同時に、その十三人、いや一人減って十二人を動かすことは彼にとって容易だった。そして運を司る神に気に入られたのか、ターゲットのいると思われる病院の情報が流れて来た。同じ高校という利点から寄の住所と学校の場所を加味して、その病院に間違いなく居ると断定し、彼は人々をこう言って駆り立てた。

『皆死に給うことなかれ。こんな風に先人の言行を踏襲したとしても、君たちには響かないかもしれないし、ましてや先例すら知らないかもしれない。お手軽な享楽に身を任せ、実体のないような薄味の流行とダンスをする。アンラッキーとハードラックする。だからこそ、この夢はそういった面でも刺激的ではあったと思う。ニーズに合っているというか、とても話題にしやすかった。そして明日その真偽は白日の下に曝される。実際のところ、どうだろう。君たちはどう思っているのかな。明後日、僕たちの命は、この鼓動はあの赤子によって活動をやめてしまうのか、はたまた二千年問題よろしく、何事も起きないのか。楽しみかい。私は怖い、ああ怖いとも。明明後日以降も生きたいからね。ここで君たちに思考のタネを一つ。もし、四十パーセント死ぬ可能性があるとして、あることをすればそれが一パーセントまで下がると聞いたらどうする。言いたいことはこれだけだよ。明日を生きる彊死よ、酉を待ちわび徘徊し、社をたてし導師よ、美を去らず拝せ』

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