第41話 世界の裏側②

ロマン奇行:俺たちを騙るようなアカウントを見つけた。アカウント名は『明生社』。今のところ、投稿は一つだけで、内容は『皆死に給う事なかれ』を合言葉にあの夢に対する考え方の是正と協力を煽っている。アカウントが出現した時期もここでの議論が始まったころと一致する。念のためこのサイトの人の出入りを探ろうと思ったんだが、君たちもバカじゃないみたいだから、情報はない。

さんぽマスター:各々の警戒については何も咎める謂れはないが、そうなると外部から人が来たかどうかわからないな。

ダイの大暴言:外部からじゃない可能性だって高い。なんなら、俺たちの誰かがここで得た情報を利用しようとしている線の全く否定できない。

力学的ゾンビ:仲間を疑うっていうのは、どうなんだ?まずは新たにこのサーバーに到達した人間がいるかを確認してからじゃないと、なんというか、雰囲気が良くないだろう?

イリオモテ大和撫子:仲間っていうほどは、親しく思っていない。ただ利害が一致したに過ぎない。下手に感情を含んだ関係性は、時に判断を濁らせる。

明日から龍之介:面白くなってきたけど、一つ忘れてないか。最低限、俺たちの議論に聞き耳を立て、最大限に情報を扱える人物。

救済と救世の女神が。

果汁先輩:確かに話には全く入ってこないが俺たちの議論の内容は筒抜けだし、このサイトに最初からいたんだから、このサイトにおける全ての権限を掌握していてもおかしくはないな。

サインコサインエージェント:とはいえ、自分で立ち上げたサイトで集まった人物に対して議題を投げかけ、それを突然SNSに持ち出そうとするか?

さんぽマスター:何とも言えないだろう。会話に参加しない分、考え方や人となりも全く未知数だ。

力学的ゾンビ:そうなってくると、現在進行形で書き込んでいることも筒抜けなんじゃないか

→メメント森がINしました

メメント森:突然でも申し訳ないが私が、ここの管理者、救済と救世の女神だ。別アカウントで信憑性が薄いかもしれないが、私自身ここは借り受けたものなのでね。それに救済と救世の女神のほうは説明しにくいんだが、動かすには制約が多い。信じてもらう努力はしよう。ひとまず、今回の犯人を解き明かす、と言うのでどうだろうか。

イリオモテ大和撫子:やって見せてもらってから考えさせてもらおう。 

ロマン奇行:それがいいだろう。

メメント森:わかった、わかった。まず、君たちがどれほどこの電子空間でのステルス性を高めていようと、管理者である私からは何人の人間がいつ出入りしたかと言うのは、分かってしまう訳で、その情報を見るに、抜けたエンジョイ商法君も、あれ以来ここには来ていないし、何時もここへ来るメンバー以外の足跡はなかった。これは確実だ。だから、あのアカウントを作ったのは十中八九、ここにいる誰かになる。そしてそれは・・・・・・

断固材家族:すみません、自分です。

明日から龍之介:なんだよ、お前かよ。確かに今日は妙に口数が少ないと思った。

さんぽマスター:何が目的だ?

断固大家族:ここにいる人間を裏切ろうとしたわけではなかった。逆にああして、世間を啓蒙することで何か行動を起こす時に、同じような思想を持った人を利用できるかもしれないと思ったんだ。

今回の件を不快だと、不必要だと思った人がいれば自分はここから去る。本当に申し訳ないことをした。

サインコサインエージェント:......君は本当に一人にでも非難されたらここを去るのか?それで気が済むのか?まず第一ここは何か定められた団体だったり、集団ではない。ここにいる資格なんてものは誰にも決められないし、決められていないし、それぞれが自由意思でここにいる。

君は、自分で考え、その上であのアカウントを作ったんだろ。ならいいじゃないか。やりきって見せろよ。

ロマン奇行:アカウントの足がつかないように運営する方法を教えるぐらいなら手を貸そう。

果汁先輩:『明生社』だっけ。いい名前じゃねーか。ここを離れて明日を捨てるんじゃ、名前負けなんじゃないのか?

断固大家族:ありがとう。自分はここにいるからには、やり切りたい。あがきたい。目の前に迫る理不尽に成す術もなく振り回されるのはもう、嫌なんだ。だから自分にできることは誰の力を借りてでも、自分自身がやり切る。明日を、未来を生きるために。


メメント森:というわけで、犯人は断固さんだったわけだけど、一件落着ってことで。今回はかなりイレギュラーな状況だったからやむ負えないとはいえ、出るつもりのない私自身も前面に出てしまったわけだし、これからも少しは顔を出すかもしれないし、出さないかもしれない。ま、神の気まぐれだと思ってくれよ。まあ、今日はこの辺で、じゃあねー。

→メメント森がOUTしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る