第26話 六月二十七日④
この国は腐っている。こんな言葉を聞いたことのある方も多いだろう。こんなテンプレートを持ち出して代り映えのしない一般論を並び立てて声を大にして大々的に表明するような格好の悪いことはしない。無限にも思え、持て余している僕の思考力はここで新説を提唱する。
この国の国民の大多数はこの国を好んでいる傾向がある、ということだ。先に提示した情報と矛盾があるという声も何処からか耳孔に届いた。なるほど、確かに今日のSNSには「あれが嫌い」「これが嫌だ」「何とかならないのか」というような不満に溢れている。それこそ、箱舟を求めたくなるくらいに。
でも、この現象についてはいくつか理由を見出すことができる。一つとしてはマイナス情報の入手のし易さだ。人は物事に対して大別すれば三つの反応を示す。ポジティブな反応。ネガティブな反応。そして無反応である。この中で一番言葉に昇華されやすいのは、マイナス情報であるネガティブな反応なのだ。ネット通販で商品のレビューを確認する際、気になるのは不具合の前科があるのか、あるとすればそれはどれほどのものなのかと言った消極的確認と表現できるものだ。購入者で満足した人でその満足をレビューに記載する人は少ない。満足も不満もない人ならばなおのこと「満足も不満もありません」と書くような変わり者は零に等しい。このようなことから不満は目に留まりやすいと言える。
もう一つの理由として愛情の裏返しと言う考え方がある。小学生時代に自分であれ他人であれ心当たりのある方も少なくないと思われるが「好きな子には悪戯をしてしまう」という土台から矛盾だらけの行動ではあるが、僕たちはその意味不明な行動が好意から由来していることを今現在理解しているし、かわいらしささえ覚える人だっているだろう。これまたよく言われている言葉である「好きの反対は無関心」に則れば反応をしている時点で嫌いではなく、ただ単に改善を求めていると捉えることも容易だろう。ダメな彼氏に文句をぶつけるのも改善の余地が(発言者から見て)残されているからであって、未来のない種に水をやる人間は居ないのだ。
それにしてもこの国は「日本」という世界的ブランドに甘えている。Cool Japanだとか、kawaiiだとか、横文字を並べては諸外国のご機嫌取りをしているようにしか見えない。
現状が完全無欠でこの上なく完成されていてこの状況が永遠に続いて欲しいと願う人はいない。誰もが向上を希求する。しかし誰もが現状を打破する手立てがなく、その慣れ親しんだ日本と言う壊れかけでも住みよいオアシスから抜け出せない。抜け出したくない。目の前にある生活水準の上を目指したいが、目の前の生活水準より下になるくらいなら、今のままに残留する。
ここからは堂々巡りである。変化のための政治を面倒だと考え、なにも発しないことで現状維持を表明したことにする。詰まるところ、これは先延ばしにしているに過ぎない。被選挙権が十八歳に上がった所でその十八の大人(笑)が無常な流行と追いかけっこをし、無益な生活を送って、何も学ばずただ目の前の享楽の奴隷ならば意味なんてないだろう。変化を恐れる安定志向の国民は流行と言う明らかな変容と日々鬼ごっこをしている。鬼殺隊とはよく言ったものである。自分がなんたるかなんて一切、微塵も、毛ほども気にしないで、気にもかけないで、気にしなければならなくなるような不幸な機会に幸運にも遭遇しないで、無抵抗に生きている。戯言もいいところだ。
ここまでの結論を言おう。僕は女子高生が苦手だ。
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