第25話 六月二十七日③
担任がいなくともつつがなく日常は流れ、僕は放課後を迎えた。転生前に比べて僕は極端にコミュニケーションを取らなくなったし、取れなくなった。突然読むようになった本を盾にしてみたり、休み時間は極力教室の中にいることを避けた。周囲はあの夢のせいだろうと判断してくれているのが不幸中の幸いだった。都合のいい解釈は説明しなければ、嘘をついていることと同義になるとはいえ、今は関わられないことのほうが重要だ。
今日は帰りに図書室を寄った。読書に目覚めたかと言われれば純粋に首肯することは難しいが悩む方法を吸収したり、人を遠ざけるにはちょうど良い空間だった。この学校は校舎の大きさと比較すればかなり控えめな大きさの図書室を構えており、きっと本物の読書家には不満が残りそうではあるが、初心者の自分にとっては逆に悩まなくて良かった。国語の教科書で見たことのあるような明治の文豪の著作を紹介文と共に掲示されているところから何冊かとって読み始めた。どれから読むべきかが全く分からず、さしあたり全ての書き出し一ページを読んでみた。流石に一ページで面白いことが分かる小説なんて存在しなかった。
諦めてランダムに並べて取ってみたものを読み始めた。すると、「ドンッ!」というか、どちらかというと破壊音のような扉を勢い良く開けた音が聞えたのでそちらを向くと、そこには今朝見た嵐のような女が立っていた。
そしてそれまで静観だった部屋を見渡して誰かを探しているようだった。いやな予感がする。そう思った。その予感は的中して彼女は僕を見つめた。そして
「佐倉君、こんなところにいたのね、待っていたのに、罪な男ね、罰を与えましょうか」と言うのだった。
これ以上僕に罪を負わせてくれるな。
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