第28話

 翌日、イネスは眠い目を擦りながら騎士団の訓練に参加していた。

 昼食を取り終わり休憩時間も終わり昼からの訓練を始めようとした時だ、王城の裏庭の方から大きな音が振動と共に伝わってきた。

 何事かと、騎士達に混じってイネスは裏門へと向かうと、無残にも魔術の爆発らしきもので削り取られた地面が目に入ってきた。

「これは……一体」

 そうしていると上空から笑い声が聞こえてきた。

「ははは、愉快だなぁ」

 そこには『神』が居た。

 白い翼に白い髪、均整の取れた程よく筋肉のついた体には薄い衣服を纏い、キラリと金に輝く瞳でイネス達を見下ろしていた。

「俺はパラテルル、約束通り娘を貰いに来てやったぞ、喜べ」

 そこに慌てて騎士達をかき分けてシャーリーがパラテルル神を見上げると、

「やっと姿を表したか、行くぞ」

「待て!約束の日よりも七日も早いじゃないか!」

「はっ、そんな細かい事気にするか?」

「……くそっ」

 シャーリーがそう悪態を吐くと同時に騎士達が剣を手にパラテルル神に向かって突撃していく。弓兵がパラテルル神に向かって矢を放つがそれは肌に触れた瞬間弾かれてしまう。同じ様に剣を投擲する騎士も居たが、剣は届かず地面に落ちてくるのだった。

「その程度か?人間。俺を殺すんじゃ無かったか?」

「くっ、まず空から引きずり降ろさないと……」

 シャーリーがそう呟いた瞬間、疾風の如く大剣を持ったイネスがパラテルル神に突撃していく。その最中に体の中のマナを練り上げ術式を構築すると「アレガニー!」と詠唱を省略した最上級の炎の魔術を自身の真下に発動させると、その爆発を大剣で受けながら空高く飛び上がり、大剣を構え直してパラテルルの肩に思い切り切りかかった。

「っ!?」

 パラテルル神は驚いたのか、そのままイネスの勢いのまま落下していく。その刃は全くといっていい程、肌に傷をつけることは出来なかったが。

 そうして落下してくるパラテルル神を待ち構える騎士達が剣を頭上に冓えていると、その寸前でイネスはパラテルル神に蹴りを入れて距離を取れば、串刺しなるだろうパラテルル神を想像した。

 けれども、

「邪魔だっ!」

 そう言ってパラテルル神は大気中のマナをその手に集めるとマナを練り上げ魔術を組み上げていく。大気中のマナが震える様が肌で感じ取れた。そして「―ほむら―」と呟いたかと思うと、先程のイネスの魔術の倍は威力のある炎の魔術を繰り出し下で待ち構えていた騎士達を黒焦げに燃やしていく。

 神が操る見たこともない程の魔術の威力の強さに驚く面々。それをさも気持ちが良いように眺めながら、

「小賢しい真似を」

 と舌打ちをするパラテルル神。

「……ガバンシ」

 イネスはまた詠唱省略した魔術で低く飛ぶパラテルル神の真下から岩の塊を勢いよく飛び出させて、パラテルル神を岩に貼り付けにさせるとその岩を軽業師の様に上っていきながら、最後高く飛び上がるとパラテルル神の腹に向かって大剣を突き立てる。

「…………それで終わりか?」

「っ!?」

 けれどその刃は傷一つ付けることが出来ず、ニヤリと笑うパラテルル神に、ゾクリとしたものを感じたイネス。

 咄嗟にイネスはその場を退くと「ウラノフェン!」と風の魔術で防御壁を張ると、パラテルル神が弱いものをいたぶる様な眼差しで「―ほむら―」と先ほどと同じ魔術を繰り出した。それに防御をしたが威力の大きさからか吹き飛ばされるイネス。

 地面が近付くとくるくると軽業師の様に回ってなんとか着地をすると、パラテルル神はイネスの出した岩を掴んで投げてくるのだった。

「そんなものか?弱いなぁ!」

 笑いながらそういたぶるように何度も岩を投げつけてくるパラテルル神に、イネスは「リチオフェル」と光の魔術を使いその場に強烈な光を放つ光源体を作ると「ゲイリュウサック」と闇の魔術で自身を影に潜り込ませると、再度岩の上に居るパラテルルに近付いてその喉元に大剣を突き立てる。

「ぐっ!」

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