第7話

 そんな風にクロシドライトへの道中もう二度程、大きな街に入って宿で夜を明かすと、いよいよクロシドライトの王都、バストネスへと向かっている最中だった。

 今日も冷え、朝から雪が降る中馬車は荒廃した大地を進んでいく。

 そうして朝から降り続いた雪が膝くらいまで降り積もる昼過ぎ頃、クロシドライトの王都バストネスの城門を潜ると、馬車は真っ直ぐ街の中央にある王城へと向かっていく。

 イネスは青を基調とした冒険者の服を身に纏って厚手のコートを着、紺だがデザインの違パンツスーツを着てイネスと同じ様に厚手の軍用コートを身に纏ったシャーリーの正面に座って、ぼんやりとクロシドライトの国内を眺める。

「さすが大国だけあって王都は凄く活気がありますね」

 シャーリーと二人きりの馬車の中も慣れてきたのか、軽い会話を交わせる様になりつつあった。勿論赤面したままだが。

「まぁ一応な、そういえばクロシドライトに来たことは?」

「昔に一度だけ、辺境の街に滞在した程度ですね」

「……そうか」

 そうして馬車が王城へと到着すると、二人は馬車から降りた。王城の使用人達がシャーリーとイネスの荷物を馬車から下ろすと、シャーリーの大きなトランクは使用人がさっさと持っていってしまった。

 イネスの荷物は不備がないか軽く確認すると、イネス自身で荷物を担ぐ。大剣も一緒にだ。

「まずは部屋へ案内する。その後、疲れているところ悪いが兄……国王に会って貰いたいのだが」

「分かりました、心積もりはしておきます」

 そうしてイネスは大剣を背負って王城の中へと足を踏み込んだ。

 途端に現れる豪奢なシャンデリアに贅沢を尽くしたきらびやかな入り口がイネスを出迎えた。

「うわ、凄い……」

「昔、贅沢好きの王様がこうしたんだってさ」

「そう……なんですか……」

 その豪華な装飾を眺めながら進んでいくと、イネス前にタキシードを着た一人の男性使用人が一歩前に出て、

「イネス・デマントイド様、お部屋までご案内いたします。荷物は私めがお持ちします」

「いえ、荷物は自分で持ちたいんです、ご厚意感謝します」

「そうですか」

 と男性使用人は頷くと「ではお部屋はこちらになります」とイネスを部屋へと案内する。イネスは大剣を背負い直して男性使用人の後を付いて行く。

 そして案内された部屋は最高級の客室だとイネスは感じた。それほど華美な装飾がなされており、そして驚く程に広い。

 男性使用人が「何かありましたらお呼びください」と言って下がった後、荷物を置きマフラーはそのままにコートを脱いで部屋中を見て回ったが、トイレにバスルームだけでなくもう一つベッドが用意された部屋があり、一人で使うには勿体ないと言えるものだった。

「はぁー……」

 イネスは普段使っていた安宿とは比べようも無いほど豪華で広い部屋に圧倒され、ため息を一つ吐くと、荷物を確認し始めた。

 一応ザイベリーの王城で確認はしていたが、四日掛けての旅だ。何か足りないものがないかと確認する。そうして何一つ欠ける事無く荷物の無事を確認し終わると、適当にソファに立て掛けていた大剣を手に取る。

 途中盗賊達とひと悶着あって一応確認したが、ザイベリーの城でも立ち寄った宿でも腕が鈍っていないかきちんと確認する暇や部屋の広さが無かったので、この広さなら大丈夫だろうと、大剣を手に取った。

 片手で大剣を肩に担ぎ上げると、思いきり振りかぶった。そしてその重量に体が持っていかれそうになると、遠心力を使ってクルリと回りながら凪ぐ様に大剣を振るう、クルクルと回りながら大剣を何度も振るっていると、次は峰に付いた持ち手にもう片方の手をやると、素早く小回りに大剣を操れば、立ち止まって大剣を肩に担ぐ。体の動きに合わせてマフラーがふわりと揺れる。

「……問題無さそうだな」

 そう一人呟くと、大剣をソファに立て掛けた。

 それからソファに腰かけると、その柔らかさに驚いた。沈み込んでいく体を起き上がらせると、ため息を吐きながらぼんやりと部屋の一角をその夕焼け色の瞳で見つめるのだった。

 イネスは何か思い立った様にソファから下りると、窓から外を眺めた。王城でもこの部屋は高い階にあるのだろう、活気にあふれる城下町が一望できるそこは、クロシドライトという三大大国の一つだという事をまざまざと見せつけるのだった。

 そうしていると、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

「失礼致します」

 そう言うと先程の男性使用人が入ってくる。

「国王陛下との謁見の予定が入っております。ご準備をお願い致します」

「あの……この服装で大丈夫でしょうか?」

 一般的な冒険者服にオレンジ色のマフラーをしたいで立ちを男性使用人に確認して貰うと、

「問題無いと思われます」

「なら、大丈夫です」

 イネスがそういうと、男性使用人は「それではご案内致します」と言ってイネスの部屋を出ていく。イネスはそれに続いて部屋の外へ出ると、男性使用人がイネスの部屋に鍵を掛けた。

 男性使用人はゆっくりと歩きながら、

「それと何かご要望があれば何でもおっしゃってください、ご滞在の際身の回りのお世話を承っております」

 そうイネスに伝えるのだった。するとイネスは、

「お名前を聞いても?」

「ソーマスと申します」

「そうですか、よろしくおねがいしますソーマスさん」

 と言って軽く頭を下げる。

「呼び捨てで構いません」

「いえ、ソーマスさん、しばらくお世話になります」

 そう呼び続けるイネスに、仕方がないという困った表情を浮かべる男性使用人ソーマス。

 城の中は広い上迷路のようになっており、イネスは案内が無ければ迷子になってしまうだろうと思うのだった。

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