施錠は抜かりなく行おう!

「あー……?」

「考えても埒が明かないだろ、田中。とにかく片っ端から試してみろよ」

「うう、分かったよ、やればいいんだろ、やれば。これは違う……駄目、はずれ……ブッブー、合わない! ああイライラする! 先生も頼み事するならするで、正しい鍵を教えてくれればいいのに! ひらけえぇぇぇ、ゴマ! っていうか、ひらけ視聴覚準備室ぅぅぅ!」

「はぁ、どうして特別教室の鍵っていうのは、こうなんだろうな。準備室だ備品棚だなんだって、鍵の数が多くなるのは分かるけど。どれもこれも似たような見た目だし、ラベルも擦れて読めないし」

「山川、俺は分かったぞ。これはひっかけクイズだ。『間違い探しです。間違いが一つあります。探してください』とか言っておいて、『間違いがあるというのが間違いです』ってやつ。つまりこの鍵束の中に、目当ての鍵は存在しない! ええい、おのれ、なんて姑息な!」

「誰がなんの目的でそんな無意味な嫌がらせをするんだよ。早く次の鍵を試せ」

「なぁ、左から四つ目の鍵くん。君は昔からとても協調性があって、誰とでも仲良くできる子だったね。俺はそんな君をずっと尊敬していた。君が例え、この鍵穴と初めて出会ったのだとしても、君ならばきっとすぐに親友になれると思うんだ……駄目だ開かねぇ」

「お前はその鍵の何を知ってるんだ」

「もー、後ろからゴチャゴチャうるさいな、山川! そんなに言うなら、俺の代わりにお前が試せばいいだろ、ほら!」

「こんなの、ただ抜き差ししていくだけだろ。こう、端から順に一つずつ――あ」

「なんだ?」

「一つ目で開いた」

「……」

「……」

「お前も山川に媚びへつらうのか! こんなに意志の弱いやつだとは思わなかった、見損なったぞこのイエスマン鍵があぁぁぁっ!」

「だからお前はこの鍵の何を知ってるんだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る