第6話 言霊の覚醒と、アヒルくんの異変

 カオスなオーディションの最中。ノートPCの画面が、俺がタイプしてもいない文字を勝手に刻み始めた。


 ​『──その時、部屋の温度が急激に下がり、三人の少女は凍りついたように動けなくなった』


「……え?」


 画面に表示された文字通り、葵、琥珀、真白の三人が、ピタリと静止した。


「お、おい、みんな?」

 ​俺の指は震えていた。俺の書いた「設定」が、現実に干渉している。


「……ぷはっ! 何よ今のは。体が勝手に固まったわ!」

 真白が真っ先に束縛を解いた。

 ​「黒白君、今の……貴方がやったの?」

 葵が震える手で眼鏡を直す。

「いや、俺は何も……。ただ、画面に勝手に文字が出てきて」

 ​エルフが真剣な顔で画面を覗き込んだ。

「旦那様……これ、もしかして貴方の『執筆』が、こちらの世界の物理法則を書き換えてるんじゃないかしら?」

 ​俺は恐る恐る、一文を打ち込んだ。

『──机の上にあるアヒルくん2号が、生命の鼓動を刻み始める』

 ボフッ!

「キュゥ……」

 プラスチック製のはずのアヒルが、生命の鼓動を刻み、つぶらな瞳で俺たちを見上げている。


 ​「ア、アヒルくんが……生きてる!?」


「凄いわ、黒白君! これ、最強の創作環境じゃない!」

 だが、真白の耳がピクンと動いた。


「……旦那様、残念なお知らせよ。今の魔力の揺らぎを嗅ぎつけて、異世界からの『お掃除係』が来ちゃったみたいよ」

 ​窓の外。夜の闇の中から、銀色の光が一直線に俺の部屋へと向かってくるのを、俺たちは目撃した。

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