第2話 紅蓮の拳と、朝の全裸鑑定

 翌朝。俺の睡眠時間は、物理的な破壊音によって終了した。


「真白ー! 生きてるー!? 寝坊してたら無理やり起こしてあげ……ぎゃああああ!?」


 ​ドアを蹴破って現れたのは、隣室の住人で幼馴染の赤木琥珀あかぎこはく先輩だ。燃えるような赤い髪を高い位置でポニーテールに結び、勝気そうな琥珀色の瞳が特徴の空手少女。彼女の視線が、俺のベッドに固定される。

 ​そこには、俺のYシャツ一枚を纏い、俺の枕を抱いて「旦那様、もう食べられないわ……」と寝言を言っている銀髪エルフがいた。


「真白。あんた、いつの間にこんなハレンチなコンパニオンを……!?」


「違います先輩! これは……!」


 ​「問答無用! 炸裂、琥珀流・十六夜連脚(おはようバージョン)!」

「ちょっ、待て……ぎゃああああ!」

 俺が廊下の壁にめり込んでいると、マシロがむくりと起き上がった。


 ​「ん……あら、赤いお姉さん。貴方の筋肉、魔力が詰まってて美味しそうね。一口食べていい?」


「た、食べる!? 私を!? 恥ずかしいこと言わないでよ!」


 琥珀は真っ赤になりながらも構えを崩さない。マシロは不敵に笑って俺の腰に抱きついた。


 ​「何よ、この赤いお姉さん、私の旦那様に気があるのね? 残念でした、昨夜は二人で『婚姻儀礼』を済ませた仲なんだから!」


「こ、婚姻儀礼……!? 真白、あんた、そんな不潔な……!」


「階段じゃなくて、崖から突き落とされた気分ですよ俺は!」


 ​マシロは琥珀が持ってきたおにぎりを勝手に食べ始め、「あ、これとても美味しいわね!」と悦に浸っている。琥珀はおにぎりを食べられたことで、なぜか「味のわかる女じゃない!」と真白の手を握り締めた。


「よし、マシロさん。私がこの世界のルールを叩き込んであげる!」


 俺の部屋は、すでに俺の管理下にはなかった。

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