第50話 魔法vs魔法


 エルフたちとの親善試合第二試合が始まろうとしていた。


 対戦カードは、リーフィスさんvsトゥビーさん。


 フィールドに立った二人。先に声を出したのはリーフィスさんだった。


「対戦相手は私です。よろしくお願いします」


「こちらこそ。私はトゥビーといいます。リーフィスさんでしたね。手加減はしないでくださいね」


「はい、お手柔らかにお願いします」


 ドリアード様が二人に確認をする。


「では二人とも、準備はいいですか?」


「「はい!」」


 二人はいい返事をした。そして、ドリアード様は手を挙げ、


「では、親善試合、第二試合トゥビーvsリーフィス……始め!」


 手を振り下ろすと同時に親善試合が始まる。先に仕掛けるのは、トゥビーさんのようだ。


 トゥビーさんは両手をかざし、魔法スキルを唱える。


「美しい水よ、気高い風の力を借り、旋風となりて大地をかけよ。『アクアトルネード』!」


 かざした手から、激しく渦巻く水が発射され、その水は地面を削りながら、リーフィスさんへと迫る。


 リーフィスさんも手をかざす。


「煌めく水よ、猛々しい風よ。旋風となりて大地をかけよ。『アクアトルネード』!」


 リーフィスさんも同じスキル、『アクアトルネード』を放つ。二人のスキルはぶつかり合うが、リーフィスさんが少し押されているようだ。


「うぅぅっ! 押し返……せない……」


「まだまだいきます! はあぁああ!」


 トゥビーさんが力を入れると、『アクアトルネード』の威力が上がり、リーフィスさんの、魔法は押し返されてしまった。


「きゃぁぁぁっ!!!」


「リーフィス王女ーー! ご無事ですか!?」



 リーフィスさんは吹き飛ばされるが立ち上がる。


 ジークさんの声に、リーフィスさんは笑顔で答えた。


「はい。大丈夫です。ありがとうございます。ーー見ていて下さい、私の成長を」


「リーフィス王女……。無理はしないでください……」


 ジークさんは彼女を心配して焦っている様子だ。もちろん、僕も心配だ。無理はしないでほしい。


 リーフィスさんは立ち上がると、負けずにスキルを放つ。


「『フラッシュボール』!」


 リーフィスさんが放ったスキルに、トゥビーさんも、対抗してスキルを放つ。


「光属性……。やりますね。『エアロボール』!」


 光と風の玉がぶつかり合い、激しい爆発を起こす。ボール系スキルは五分五分だ。


「魔法の才能があるようですね。いい腕をしてます。でも、私は魔法で負ける訳にはいきません」


 トゥビーさんはそういうと、祈るようなポーズを取った。


 胸につけていたペンダントは緑色に輝き、無数の光を散らす。


 右手をゆっくり前に差し出すと、無数に散らばった光は、その手のひらに一つの光となって集まってきた。

 すると、ドリアード様がそっと呟く。


「あの技は……」


 準備が終わったトゥビーさんは、手を動かし標準をリーフィスさんに定めた。


 手のひらから溢れるその光は見るものを魅力した。でも、あの技からは危ない匂いがする。ただの感だけど。


「ふぅ。……私の大技です。ーー危ないので避けて下さいね。

碧色へきしょくに輝く宝珠ほうじゅよ。一線の光となりて、敵を撃て! 古代魔法! 『クライノート=シュトラール』!」


 トゥビーさんがその技を放つと同時に、ドリアード様は慌てた様子で言う。


「トゥビー! その技を使ってはいけません! 危険です!」


 ドリアード様はそういうが遅かった。もう、その技は放たれていたのだ。


 その美しい薄緑色の光線は、宝石のエメラルドみたいだ。


 光線は、速くはないが、広範囲で地面を削りながら進む。

 

 危険察知した、僕はリーフィスさんの元へと走った。


「守護する光よ。我を守りたまえ。『プロテクション』」


 あれは、被ダメージを軽減する補助スキル。ダメージを軽減するだけで防げるとは思えない。


 このままだと怪我をしてしまう! しかも、『ダメージプロテクション』や『セイクリッドバリア』などの下位互換のスキルだ。


 僕は、リーフィスさんの前に立ち、光線を剣で突き刺した。


 くぅぅっ。ものすごい威力だ。剣を両手で持っているが、体ごと持っていかれそうな威力だ。


 そして、数秒経つと、ピタリと光線が止んだ。


 そして、リーフィスさんは怯えた声で僕に話しかける。


「ト、トワさん……?」


「はい、トワです。リーフィスさん大丈夫ですか?」


 橘さんの返事を真似してみた。気づいてくれてるかな? まあ、そんなことはどうでもいいんだけども。


 先程の技でリーフィスさんは、腰が抜け、怯えているようだ。


 あんなものまともにくらっていたら、消し炭だろうし、仕方ない。


 リーフィスさんの状態を確認した僕は口を開いた。


「ドリアード様。リーフィスさんは棄権します」


「分かったわ。親善試合第二試合はトゥビーの勝利。

 リーフィスちゃん大丈夫? ごめんね、うちのトゥビーが調子に乗ったみたいで」


 すると、トゥビーさんがこちらに走ってきて言った。


「すみません。大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」


 その言葉にドリアード様は子どもを叱るような口調で言った。


「こらっ! トゥビー! あの技は使ってはいけないって言ったでしょ!? 

 怪我をさせたらどうするの? それにあなたの体にもダメージがあるはずよ!」


「すみませんドリアード様……。魔法に関しては負けたくなくて……。ちょっと驚かそうと……。ーーそこの君、ありがとう!」


 さっきの大技はトゥビーさんの体にもダメージがあるのか。いや、本当に危なかったよ。


 僕は、腰が抜けたリーフィスさんを抱え、みんなが待つ場所に連れて行った。


 特にジークさんが半泣きになっていた。泣きたいのはリーフィスさんの方だろうにね。


 そんな事を思っていると、エルフの大男がフィールドに立って、僕たちを挑発するかのように言った。


「さぁ! 人間族ども! 次は俺様が相手だぁぁ! 捻り潰されてぇやつはでてこいやぁ!」


 エルフの人たちは、いちいち僕たちを挑発しないと気が済まないのか。


 リーフィスさんをジークさんに任せて、僕はゆっくりフィールドへと向かう。


 そして、エルフの大男と対峙し、僕は落ち着いた様子で言った。


「お待たせしました。最後は僕が相手です」


「ほぉ。チビが相手か。てっきり、あの赤髪ライオンが来るかと思ったぜ。踏み潰して終わりだな」


 この大男は本当に身長が高い。ドリアード様より身長がある。


 190センチ以上はあると見た。僕からしたら巨人だよ。


 本当に、踏み潰されそうだ。物凄い覇気らしきものを感じる。


 まあ、僕も負けるつもりはないんだけどね。


 すると、突然、心配そうにドリアード様が話しかけてきた。


「坊やさっきの魔法を受け止めてたけど大丈夫? 回復魔法をかけるわ」


「僕は大丈夫ですよ。お気遣いありがとうございます」


「おいおい、ドリアード様に回復してもらわなくていいのかぁ? 負けた時の言い訳にでも使うつもりか?」


 仲間を侮辱されたままでは、僕のプライドが許さない。苛立ちを隠せない僕は挑発するように言った。


「分からないんですか? 回復しなくても僕は勝つんですよ。それより、そんな状態の僕に負けた時の言い訳でも考えたらどうですか?」


「ほぉ。チビのくせに態度はでかいようだな。謝ってももう許さねーからな」


 まあ悪いことだとは思うけど、挑発してきたのはそっちからだからね。


 おあいこだ。僕の事を悪く言われてもいいけど、仲間の事を悪く言われるのは腹が立つ。


 そんな中、僕は剣を構える。


 そして、ドリアード様が口を開く。


「ではこれより、親善試合第三試合、ウェーンvsトワ……開始!」

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