奏と笑顔と太陽と その2

 先程までの雨空とは打って変わって、秋晴れに恵まれました京都競馬場。

 最後に16番ビーエムタイガーが入って、ゲートイン完了・・・

 スタートしました!

 各馬一斉に綺麗なスタートですが、2番アトレッティ大きく出遅れて最後方から。

 さてまず何が行きますか・・・


 京都府京都市伏見区。

 最寄駅が、京阪電気鉄道のよど駅であることから、関係者から通称「淀」とも称されるここ京都競馬場。

 レースの実況アナウンスが響き渡る中、

『また雨女に戻ってしまったぁ』

 と、肩を落としながら歩く奏を連れてきたのは、人気ひとけが散漫になったパドック。

 パドックとは、レースに出走する競走馬たちが、スタッフにひかれて周回する場所で、下見所したみじょとも呼ばれている。

 彼らの状態を観察し、太ってるとか痩せてるとか、足の運びが力強いとか弱いとか、様々なポイントを見分けて馬券購入のヒントとするのだ。

 また、レースが行われる馬場へ向かう前に、騎手が騎乗する場所でもある。

 この時間帯は、馬糞の清掃をする作業員さんが周回をていた。

 競馬場を本日のデートスポットに選んだ男女。お気に入りのカメラを手に談笑を交わす女性たち。そして、パドックをグルッと取り囲むように吊り下げられた、個性豊かな横断幕の数々。

 熱狂的なファンや関係者たちが、推し騎手や競走馬、さらには厩舎を応援するためにと、手作りされた入魂の作品。

「逃亡者 サイレンスブライアン」

「鬼滅の末脚 オクターヴ」

「貴公子 神谷夕貴かみやゆうき

「夕貴専用 サイレンスブライアン」

 二強と言われる本日のメインレース。

 アイドル的人気だけなら、サイレンスブライアンが勝ってるのか。馬も人もどっちもイケメンだしな・・・

『ひとさん、あのサイレンスなんちゃらって強いの?』

「うん、現役最強の一頭だよ」

『あそこ、あそこの並び面白い!』

 そう言われて向けた目線の先。

「俺の尻だけ見てればいい サイレンスブライアン」

「オイ! チョットマテ!」

 計算なのか偶然なのか。プッと笑えるオシャレな並び方。

『チョットマテって、いるの?』

「うん同じレースに出てるよ。あとで新聞、買ってあげるよ」

 競走馬の状態を確認するだけではなく、パドックにはこんな楽しみ方もある。

『ここ本当に遊園地みたい』

「うん、まだほんの一部。めちゃくちゃ広いよ」

 連れてきて良かったと思えるほど、奏の表情は明るかった。

『あっ! 馬! 出てきたよ、ひとさんほら!』

 最近は益々、仕事に追われて大変な毎日を過ごしている奏。

 その疲れは、顔や身体に嫌でも出てきてしまうが、僕の前で出さないようにと、押し込んで押し込んで押し込んでいる奏。

 そんな彼女を、僕はなにがなんでも大切にしていきたい・・・

『パカパカ鳴ってるねぇ』

 今日は有名なレースがあるので、人混みは仕方ないのだが、なるべく混み合う場所は避け、場内を歩き回った。

 とは言え、避けられないほど人がいる。

 ここからレースが行われるメインスタンド側へ、真っ直ぐ足を運ぼうとすると、途中、嫌でも人混みに入る。

 味方してくれているツキに任せて、もう一勝負と息巻く人。対照的に、大きく散財してしまった負け分を何とか取り戻したいと、食い入るように競馬新聞を凝視する人。反省会と称して各々の分析を討論し合っている熱い人々。

 設置されている椅子は縄張り。通路の端の方も縄張り。僕たちが落ち着いて腰を下ろせる場所は、ここにはない。常連のおっちゃんたちで一杯だ。

 おじちゃんやおばちゃん、恋人関係のカップルや、大学生。小さな子供を連れたファミリーすらも、週末はここに集まってくる。

 人間観察が好きな奏は、意外と楽しんでくれいるようだった。

 そんな人混みジャングルを抜けると『どれくらい?』と聞かれて答えられないほどの、長い直線をようするコースが、目の前に広がった。

 奏の口は、ポカンと半開き。

『凄いねぇ、まだこんなに広いとこあったんだ』

 目の前を駆け抜けていく競走馬たち。そしてレース実況が、より大きく鳴り響いている。


 さぁ先手を取ったのは11番カザミゴールド。

 後続に2馬身3馬身とリードを広げて向こう正面に入っていきました。

 2番手に3番ニュージーランド。外から16番ミヤコノジョー。

 その後ろは2馬身半開いて8番のモモッチスペシャル。

 外5番手13番カレンダーガール、間から9番フィアット。

 内4番、掛かり気味にヨツバノトウチャン並んでいきます。

 中団、15番のアキサンブレーブはこの位置、単勝1番人気。

 残り1200を切っていきます。

 半馬身内に7番バルス。

 直後に5番ソラノスカイハイ、並んで外12番アシヤマダム追走。

 1馬身半開いて後方内1番のカザミダイナマイト。

 外目14番のワンナイトフラワーがいて、半馬身差並んで6番モフクチョウ。

 残り1000メーター。

 あとは4馬身、10番のコダマイットウセイ。

 最後方2番ワンパンチといった体型で、各馬第3コーナーのカーブへ向かいます。

 逃げる11番カザミゴールド、後続に3馬身のリードをつけて・・・

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