奏とスフィンクスと
うぅ痛い・・・
夜勤がピークとかマジないわぁ。本当に勘弁してほしい・・・
よく頑張りました私。よく耐え抜きました私。
電車の中で、激しい痛みに襲われ顔面は蒼白。お腹の中で何か
私は、生理痛期間に突入した。
座りたい。座席が空いてるから座りたいけど、お尻は殺人事件だもの座るのが怖い。
自転車は、職場から駅まで終始立ち漕ぎ。やっぱり私にサドルはいらない。
景色を見て、少しでも痛みを紛らわせたい。それなのに、丁度目線の高さに貼ってある書籍の広告が邪魔をする。やたらと濃い顔のおじさん。ヅラっぽい知らないおじさんだった。
この広告、一年以上貼ってあるよね。そんなこと可能なんだね。なんか凄い・・・
ふーっ。
深く息を吐いた。
普段なら、ドラえもんの道具並みに便利な携帯を取り出し、興味を持ったものは即調べて知識に変えてしまう私。でも今は、駅に着くまでの間、このおじさんを朧気な表情で、見つめ続けることしか出来なかった。
むかつく顔・・・
むかつくことは、もう1つあった。
ようやく最寄り駅に着いたと安堵しかけていたのに、開いた扉の目の前に、でっかいキャリーケースを3つも持ったアジア系の観光客が3人。
両サイドへ動こうとしないどころか、降りようとする私が見えていないかのように、我先にと乗り込もうとしてきた。
なんだろうこの図々しさは・・・
あまり旅行に行かないから、こんな大きなキャリーケース見たことない。1メートル四方ある。売ってんのかこれマジで。
さすがに頭にきて、
『んんっ!』
と殺意の念を籠めて、鼻息を荒げて睨みつけてみる。本日の私はブラックなのだ。怒らせるなよ?
なんだ出来るじゃないか・・・
おそらく旦那さんだろうな。慌てたように奥さんに指示を出し、やっと荷物と一緒に左右へ別れてくれた。
最初からそうしろっ! キャリーケース蹴飛ばしてやろうかと思った。ちっ!
生理痛の数日前辺りから、私は毎回の如く精神的に闇に堕ち、本当に機嫌が悪くなる。
ああいう人たちがいるから、アジア系観光客のイメージも悪くなって総じて嫌われるんだ!
あ。てめぇもアジア人じゃねぇかってツッコミはなしで。などと考えながら、出血で気持ち悪いお尻を庇い、家路を急いでなんとか帰宅。
『ただいまぁ』
いつもと変わらない我が家の玄関。
ちょっと買い出しなんかに出掛ける時用の、サイズの違う黒色とライムグリーンのサンダルが2足。普段は邪魔にならないようにと壁側に並べられている。
リビングへの扉を開けると、部屋は少しだけひんやりしていた。背負っていたリュックを下ろし、すぐさまトイレに引き籠る。
人並み以上に重たいこの症状は、言葉では表現し切れないほどで、この痛みに襲われる度、私は自分が女性であることを恨む。
こんな痛み必要なのかよ!
なんで女だけなんだ神様おいっ!
どちらかと言えば男性に生まれたかった。
性格はボーイッシュだとよく言われてきたし、学生時代からの友人たちにも「お前は胸ばかりで色気がない」と言われ続けた。なんならその中にいる男の子のほうが、女性っぽいくらいだ。
でも、なるべく思わないように考えないようにしている。あぁ、過去に戻ってやり直せるならなぁと頭をよぎる考えも同じ。
たまに二人で話すんだ。
「高校生くらいから人生やり直せないかなぁ」
『そんなことしたら、出逢えなくなっちゃうよ?』
「うん・・・」
『今のひとさんの人生だったから、劇団であのタイミングで出逢えて、今こうして二人でいる。もし違うタイミングで出逢えたとしても、私は今の生活が幸せだし、その時、ひとさんを好きになるとは限らないよ?』
「それは嫌だ、困る」
『そうでしょー。私は今で幸せだから』
だいたい話をし出すのは、ひとさん。笑。
いつも私を大切にしてくれる、離れていても必ず側にいてくれる
ひとさん。
お父さんとお母さんは「ひとちゃん」と呼ぶ。
初めて実家に招いた時のお父さんは、上機嫌で機関銃が止まらなかったし、お母さんは、ひとさんが作ってくれた
大切にしてるものランキングで、家族、姪っ子と甥っ子、ペット、友人に次いで第5位にいる私の大切な男性だ。
第5位・・・また怒られる。てへぺろって言っておけば許してくれるかな?
いや、きっとほっぺを抓ってくるな。むぅ・・・
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