悪い人
頼まれた資料を持って、執務室へ。
きちんと閉めて出たはずの扉が、少し開いていた。
中からは、言い争う、というより一方的に罵詈雑言を浴びせかける声。
入るのを躊躇っていると、乾いた音が部屋の中から響く。
硬い床を強く踏み鳴らしながら、こちらへ近づいてくる足音。
鉢合わせないように、開いた扉の陰に隠れて息を潜めた。
右手を左手で包むように胸元で握りしめ、飛び出していく少女。
それを見送り、中の様子を伺うと、部屋の主は頬を押さえながら薄く笑っていた。
「悪い人ですね」
「ん。知ってる」
何事もなかったかのように資料を受け取り、仕事を再開する。
頬には、平手の痕もなかった。
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