第17話 サクセスバイオの掲示板

 サクセスバイオの掲示板には、10万件を超える書き込みがあった。あまりの多さに驚いたが、それだけ注目されてるってことなんだろう。まずは上場した直後から見てみるか。


「この会社のポテンシャルからして3000円は通過点だよ。将来的には株価は10倍、いや、100倍もありえるでしょ!」

「初値1942円はお買い得すぎ! こんなすごい会社を割安に買えてラッキー!」

「革新的な薬でたくさんの命を救うすばらしい会社! 株主になって応援しよう!」


 掲示板は、株主たちの夢と希望であふれている。しかし1年後、株価が1000円を割れたころには、掲示板の空気もガラリと変わっていた。


「ずいぶんと下げましたね。でも将来性があるのは明らか。投資は忍耐! 長期でガマンです!」

「初値からまさかの半値ですか。いったいどうすれば……」

「新薬で人の命を救うのも大切ですが、株価対策はどうなっているのでしょうか?」

「こんなクソ株を買っている時点で自業自得」

「まだまだ下がるでしょ。だって開発能力なんてこの会社にはないんだから」


 困惑する株主たちと彼らを煽るコメントが交錯し、雰囲気は殺伐としている。さらに1年半後、株価が上場来安値の420円をつけた時、掲示板は地獄と化していた。


「ふざけんなクソバイオ! 金返せ!!」

「こんなのありえない。騙された!」

「そもそもなんでこんなゴミ会社が上場できたんだよ! 証券会社と取引所もグルで投資家ハメただろ!」

「バーカ。投資は自己責任。買ったのは自分だろうが!」

「こんな会社の株買ってる時点で、チンパンジー以下の知能だね」

「420円でも割高。だってこの会社の価値はゼロなんだし」


 怒り、恨み、ののしり、あざけり。あらゆる負の感情が掲示板にはあふれている。そしてそれは現在でも変わっていなかった。1200円という株価が高いのか安いのかについて、投稿者同士がみにくいレスバトルを繰り広げている。


 だめだこりゃ。こんなの見てたら、こっちまでおかしくなりそうだ。俺は、他人の考えを知るために開いた掲示板をそっと閉じた。

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