16話:放課後と心の穴?

 結局昼休みの後、花が休み時間に来ることは無かった


 それが少し寂しいと思うが、この後放課後来ることを知っていると

 まぁ、何の違和感もない


 しかし、今朝の幼馴染との気まずい空気が生まれたことを考えると

 この後の、展開に少し憂鬱にもなる


 俺と、昼休みはご飯を食べに来たわけだし

 彼女にだって、友達と過ごす時間が必要だと考えれば


 逆に休み時間に来ることがおかしいのだろう



 ―そして、今日の授業が終わる。


 ざわざわとした教室から、人がどんどん去っていく。


 その間に、ハジメと香も教室を離れた。


 正直期待して、教室で待っているが


 しかしまだ、来ないと待ちぼうけしている感覚で

 なんとなく焦燥感にかられている。


 これが恐らく、毒されてるということだろう。


 ここまで、悪化してるとは...


 さっき昼休みの空気や話によって、離れている間の寂しさは膨らむ


 これは、いけない。



 このままでは、良くない

 そう思い、席を立った


 もしかしたら、ここまで来ないのかもしれない


 彼女が待っている場所が異なっていて

 まで迎えに来ると実は言っていなかった可能性だってある


 そもそも、約束自体無かったのかもしれないし

 そう思うと、ここで待っているのもまたおかしいことになる。

 


「帰るか。」


 鞄を背負い、教室の扉へと向かう



 扉の前に立つと、扉が勝手に開いた。


「あ、教室でまだ待っていてくれたんですね」


「ああ、その...」



 実際に教室に迎えに来てくれたことを考えると嬉しい


 それを言うと、バレてはいけないことまでバレて

 彼女が新たに踏み出してくる可能性はある。


 今日は比較的、トラブルはなかったが

 このまま続けば、トラブルからは逃れられない


 そうだ、如何にして上手く別れるかを考えないといけない。


 普通ではなくなったが、しかしこれは望む形ではないことは確かだ。


 俺は何を考えてるんだ?


 基準が、おかしくなっていたんだ。



「その、約束の通りよければ、一緒に帰りませんか...?」


 その雰囲気は、朝のものとも、昼のものとも違う

 遠慮気味な質問だった。


「ああ、一緒に帰ろうか」


 ―約束の通り


 その時に浮かんだ、彼女の微笑に少し心が奪われるのは

 あまりにチョロいと、自覚した。


 ―帰りの道を歩く。


 学校を出るときの目線が気になったが

 正直、既に何度もあったものなので、慣れないといけないとは思っている。


 教室で待っている間、彼女はどこに居たのか分からないが

 そこそこの時間教室に居たので日は既に傾いていた。


「教室で、何してたんですか?」

 花が尋ねてくる、それもそうだろう。


 帰宅部の俺、まぁ花が帰宅部を知っているか分からないが

 その俺が、あの時間まで待っていたから純粋な疑問だろう


「う~ん、勉強...とか?」


 無難に嘘をつく。


 そこで、会話は止まる

 しかしまぁ、会話が弾まない


 彼女も何か意識してるのか、無意識か分からないが

 口数は共に増えない。



 朝とは異なり、帰り道に人は少なく

 噂話も気になるほどではない、目はあるが集中することはなく


 ちらちら程度、夕日をバックに帰る二人


 よくよく考えると良い雰囲気じゃね?


 あれれ?


 おかしいな、もしかしてこれも作戦なのかななどと

 あらぬ疑いをかけるが


 そんな訳はない。


 ただただ、話すことなく、数分間の道を歩きこのまま駅へと到着した。


 ―駅の構内は一定の賑やかさを見せている。


 その音は少し騒がしいくらいだが、いつものものだった。



 そこで突然


「あの、何かアレルギーとかってありませんか?」


「え?」


 何の脈絡もなくそんなことを聞いてくる。


「ああ、単に興味あるだけですので深い意味はありません」


 どうやら、雑談らしい?

 ただまぁ、提供された話題だし、答える


「特には...」


 これで、終了...


「花はアレルギーとかあるの?」


「いいえ、これといって無いですね」


「へぇ...」


 仮にも彼氏彼女の関係にしてはあっさりしてる。

 今朝の雰囲気がまるで嘘のようだったが、まぁ別にいいか...そんなもんだろう


 と、一人で考え納得する。


「それじゃあ、また明日」


「また明日。」


 こうして、別れるわけだが

 何とも言えない、彼女の変化には振り回されている気がする。


 もしかして、俺が良くなかったのかも。


 それがあり得る。

 何かがいけなくて、関係が少しずつ拗れているのかもしれない


 目には見えていないが、それは十分にあり得るわけで


 もしかしたら、明日には向こうから別れを告げられるかもしれない。


 とりあえず、明日になるまで分からないが...


 それに対し、何ともモヤモヤした気持ちのまま家に帰った。


 ―翌朝


[ピンポーン]


「雄太君!ご飯を作りに来ましたよ!」


 再び元気な彼女が家に訪れた。


———

2022/01/28:

前話の会話と齟齬があり、修正させて頂きました

報告ありがとうございます!


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