15話:アピール&牽制は、必要ない
席が取れた後は早かった。
花が並んだ途端に、列から離れる人が多かったからだ...
いやいや、それは無いだろという光景が目の前に広がって
正直驚いたが
食欲旺盛な、男子高校生にも女子高校生にも
花という存在は、ものすごい大きいらしい。
そして、列から離れるとき、俺を睨む人が多かったのも
まぁ、余談であるが語っておく。
それはそうだろうなと納得のいく一方で、花の方は大丈夫かと思い
横を見るが、ただ一緒にいるのが嬉しいのか、食堂で食べたかったのか分からないが
俺を、睨む目線には気づいていないらしい。
それに、少しだけ寂しいと思ってしまった...
それからは、あっという間に、自分たちの番が来て
注文し、運び
現在は、向き合って
「いただきます」をしたところである。
ちなみに、花はコロッケカレーを、俺はうどんを注文している。
「美味しそうだね!」
そう言って笑う顔に、影は見えない。
ずっとこの調子であれば有難いが。
そうはいかないことはもう分かってるので
諦めている。
「そうだね」
ただ、そう答えて、俺は目の前のうどんに集中する。
食堂の食べ物は、基本的に学生にもそこそこ手ごろな値段で
美味しい料理を食べられる。
そういうもので、俺の食べているうどんも
500円で食べることができる。
うどんの上にはわかめとコーンが乗っていて
他にもトッピングは可能
一番安いが、ちゃんと出汁の味がしてお得である。
「ん、うまい」
ボソッと、呟く
正直、この値段にしてちゃんと満足できるのは凄い
出来立て効果や、勉強した後というのも影響してるとは思うが
それを抜いても、おいしいとは思う。
「ん~、カレーも美味しいよ」
ニコっという感じの笑顔を浮かべて、幸せそうに食べるが
結構意外だったりする。
気持ちが浮いているから
コロコロ感情を見せているだけかもしれないが
朝食時には、こんな感じじゃなかったし
大袈裟であるかもしれないが、おいしいことは分かる。
「あ、そうだ、雄太君も食べる?」
「はい、あーん」
テンションの高い彼女は、普段の自分の行動について
忘れてしまったのだろうか?比較的大人しいイメージだったのに
この数時間で、一体何があって変わってしまったのかわからない。
スプーンの上には、カレーが乗っている。
正直、ここで食べに行きたいが
流石に俺には、ハードルが高い
それに、この数時間の関係で変わるものがあるにしても
俺の精神的面はあまり強くなってないわけで
この魅力的な提案に頭を抱えつつも
「いや、あの、今回は辞退させていただきたく...はい」
「あっそ」
少し拗ねたようにそっぽを向く
随分と表情が
「―」
周りから、何故いかない?という目線と、行ったら〇すという
そんな視線が、飛んできている。
もしかしたら、過剰反応かもしれないし
そんな風に思って無い可能性も無きにしも非ずだが
ギラギラとした視線が刺さっているのは、事実だ。
「じゃあ、次は食べてね♪」
「...」
明らかにテンションが可笑しい花だが
後で、思い出して悶えたりしないのだろうか?と不安になるレベルで
今日だけでも、色々とぶっ飛んでいる。
キャラ崩壊というには、あまりに雑だが...これはこれでいいと思う。
しかし、厄介なのはこの周りのオーディエンスで
いつもと違う姿に、怒りを隠せていない人もいるわけで
問題は、そこだ。
しかし、いつもなら恐らく敏感な彼女も今は、カレーを食べて微笑んでいる訳だ。
正直、不安しかない。
この後、俺どうなるんだ?
それ以外にも、香のこともあるし
色々と、悩むことが多い。
―そうだ、考えるのはやめたんだ...
こんな風に複雑に考えるから、不安になるんだ...うん
すると、花は周りの視線に気づいたらしい。
「なんか、見られてるね...」
顔を、一気に赤くし出す。
逆に見られてないと思ってたのか?そんな風に聞きたい。
聞きたいけど...聞けない。
「そうだね」
なんだかクール慣れている雰囲気を出している気がするが
ただただ、冷静なだけに過ぎない。
花が顔を赤くしていることで、よりざわめきが大きくなっていたり
怨念付きの視線が増えたり
そんなことが、現在進行形で進んでいるが
もうどうしようもない。
これから、どんどんこういうことが増えていくと分かっているから。
しかし、こうして彼女と過ごしていると
"ぽい"ことがしたいと考え始める。
今まで、彼女がいなかった(できなかった)ということもあり。
実感があったり、経験があったりするわけではないが
これが、ずっと続くわけじゃない
よくよく考えれば、この機会
高嶺の花である、水田花と付き合っているというのは歪なのだ
しかも、向こうから
なんやかんやで、この状態にある
しかし、それは俺の提示した"仮"の条件であって
よくよく考えれば、その辺の話も今後していく必要がある。
そうしたとき、この関係はどこまで続くのか本当に分からない。
彼女の性格が、コロコロと変わっているように
表情だったりをこうやって目の前で変わっているように
関係は、変わってしまう。
そう思うと、この機会はとてもありがたいと思う
ならば、利用する...といえば言い方は良くないが
折角なら、これを期にしたいことがある。
そんな風に、考えつつうどんを啜っていると
心配そうな、花がこちらを見てくる
「どうかしましたか?」
口調が
興奮が収まってきたということだろうか?
それに関しても、今後すこしずつ分かってくるだろう。
「なんでもないよ、花について考えてただけ」
今後についてというよりは、オブラートに包めている気がする。
困ったことに、向こうから誘うのよりも
こちらから誘う方が大きいハードルがある
負けた気もするし、想像するだけで何か気まずい
そうやって、少しずつ距離を詰めていくのかもしれないが
自分から積極的にはなれない
なれたらいいなと思いつつも、昼食は無くなる
「「ごちそうさまでした!」」
手を合わせて、ご馳走様をして皿を片付けに行く
「そ、それでは!放課後教室までお迎えに行くので、待っててくださいね」
なんだか、いつもの調子と異なっている花に違和感を覚える
若干顔も赤い?
何故か分からない、もしかしたらさっきのことが
頭の中にフラッシュバックしていて、恥ずかしがっているのだろうか?
そんな風に思いながらも
「ああ、待ってるね」
そう答えて、教室に向かう廊下を歩く。
まぁ、結局のところ
ほぼほぼ、同じ道なので、食堂へ向かう時と同じように
並んで歩くわけだ
噂話だったり、ざわめきが起こったりするが気にせず歩いた
結局、別れるまで、花は顔を赤くしていて、一言も話さなかった
珍しいこともあることだ。
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