11話;ナゼ、ソナタハ、ツイテクル
俺たちは、道中
彼氏というものを、羨ましがっている、花の友達であるミツバを引き連れ学校へと向かっていた。
ミツバはミツバで、良い人で、明るく気さくなことが分かる
しかし、ただ付き合っていることについて、聞かれているのが厄介だというのが、今の心情である。
「ねぇねぇ、馴れ初めはどんなんだったの?」
素直で、人懐っこい感じの様子、馴れ馴れしく思わないのは、彼女の特性だろうと思う。
「うーん...」
俺は考えてみるが、馴れ初め...とは...(哲学)
俺にも、正直分からない
気が付けば、色々あって、結果こうなってしまった感が、否めない
俺自身、未だに整理はついてないし
正直、告白を受けいれたとは、認めているわけではない...絶対に...
責任の押し付けにも感じるかもしれないが
この、ある意味役得な関係性は、大変歪な物なのである
そう、声を大にして言えれば楽に違いないが
実際は、それが難しいというのだ。
さて、どうしたものか
そもそも、答えが無く考えることではないはずだが切り抜けたい。
そんな時
「今は、そんなこといいじゃんっ!それに周りに人いるし、恥ずかしいよ~」
と照れた様子で、花が言った。
花自身、これをどう話すのかということは、念頭にはなかったのだろう。
だって、ほぼ脅しだったもんね。
「え~、それはないでしょ?
今まで、まったくホの字の無かった花に、突然彼氏ができて
でも、彼氏は、全然普通の人っぽいし...
なんとなく、納得いかないんだよね~
おかしな話だけど。
だって、それでいいなら、もっと付き合っててもおかしくないでしょ?」
個人的には、正論だと思うが、その言い方は、あまり花にとって良くないことは分かっている。
今も横で、オーラを出しているのを見る限り、怒りはあるが
友達という関係性もあって、抑えているのか
それ以外が原因かは分からない。
「ま~いっか、いつか教えてもらえる時に、教えてよ~
それは、約束ってことで、それじゃあ私ここで、お別れだから~」
"ばいばーい"と言いながら、愉快な感じで去っていくミツバに、同じように"ばいばーい"と花が、声をかけていた。
話をしていると、本当にあっという間に時間は経つようで、既に下駄箱の前にいる。
外靴から、学校指定の靴に履き替え、花の履き替え終わるのを邪魔にならないように、隅っこで待った。
仮にも、彼氏であればその程度のことは当たり前だという意識の中でやっている。
という、常識の中で、行動しているに過ぎない。
『あっ』
彼女は、俺が待っていないと考えていたのか、気づくといそいそと走ってきた。
「あ、ごめんね 待ってると思ってなくて...」
気まずそうな顔をしているが、それもそのはずだろう。
勝手にしていたのだから、仕方がないと思う。
小さな謝辞を受けるも、別にそれを求めているわけではない。
ただまあ、このシチュエーションは悪くは無いと思った。
それから、教室に向かうわけだが
二階に上がった時点で、分かれ道が来る。
「じゃあ、またあとで」
自然な感じで、言えたと思うが、どうだろうか?
「ううん、教室まで、ついていくよ?」
「...?」
いまいち理解ができない。
教室まで、付いてくる必要性を感じない、また、どういうことか理解できないのも、事実で、尋ね返す
「ナゼ?」
「いや、なんとなく、クラスの空気とかを知りたいなって...ダメ?」
何故だか、分からないが、危険信号がはっきりと出ている
チリチリチリチリと鳴り響くサイレンの音が、頭の中に響き渡る。
それは、原因を聞くまでもないことのようだ。
理論ではないものなのか、野性的な勘なのか分からないが、それは何か、断定できるものではないが、確実に中に入り込み、精神をえぐり取っていく感覚がある。
吸い取られるとでも、言えるかもしれない。
花は、本来ここの道を左側に曲がる
左側にはトイレがあり、ここを右に曲がると俺の教室がある。
その手間をかけてまで、わざわざ俺の教室に来る意図を理解できない。
そんな、謎のリスクを冒してまでするべきことなのか、分からない。
ただ、一つ分かるのは、恐らく選択肢はない。
目の前で、ウルウルと目に涙を浮かべている彼女の、その視線がこちらを向くとともに、周りの目は冷たくなっていることが、肌で分かる。
「ねぇ、ダメ?」
そんな風に、見つめないでくれ...
それは、あらゆる面で、良くない。
彼女のそんな姿をみて、皆はどう思うだろうか?
彼女だろうが、乙女を虐めている像に見えることは間違いない。
だからこそ、受け入れるべき...ではない!
「いや、ダメだ「ねぇ...ダメ?」」
重ね技、これは、ただの我儘ではないのか?
しかし、この不毛な戦いに、けりをつけるには、俺が認める必要がある
恐らくそうだということを、この数日で理解していた。
そんな理解力の高い(自称)、俺はこの状況を受け入れなくてはならない。
彼女の、我儘は下手をすれば実害を受けかねない。
「わかった、いいだろう」
「いつもと、雰囲気違うけど、どうしたの?」
突っ込まれてしまう。
顏はどや顔なだけに、余計恥ずかしさが襲うが、俺は覚悟を決めた
この先も、同じようなことが起きる可能性があるのであれば、このアラートも受け入れて、進む必要がある。
それが、成長への一歩なのだと、甘んじて受け入れる必要があると思われる。
というか、恐らく既に気づいていたが、ただただ目を逸らそうとしていただけなのかもしれないと考え始める。
「ねぇ、行こ?」
首を傾げ、当然のように、俺の教室に向かっていくが
本来、俺が先導する場面ではないかということに、俺は首を傾げつつも
彼女を先頭にして、教室へ向かった。
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