12話:教室=修羅場??
ピリピリとした空気が、その空間には生まれていた。
これは、彼女の花と、幼馴染の香が生み出している。
正直ナゼ、こうなっているのかは分からない。
まぁ、教室に一緒に(?)向かう際に、嫌な予感・不穏な空気はなんとなくしていた。
さっき感じた予感は
今、目の前に起きているこの事態のことを察していたのだと思う。
先日もそうだったが、人の勘は案外信じるべきなんだと思う。
今になって
俺としては、当然ながら
女子同士だし仲良くなれる可能性を考えていた。
というか、それしか考えなかったが、これはある意味どんでん返しと言えるんではないか(?)
―さっきのこと―
教室のドアを、開くと香が「おはよ~」といつもの具合で、俺に挨拶をしてきた。
そして、横に目線をずらして。
花に気づいたと途端。
その顔を一気にゆがめる、不快感を示した。
「ゆ...雄太、なんで水田さんが?」
香が、ここまで動揺するのは珍しく
俺は、意外だと思ったが口には出さない
気配は、もう分かっている。
とにかく、言葉を選ばないといけない
もし、何かを間違えてしまったら、あの屋上の事件の時と同様の危ない予感がプンプンしている。
肌に纏わりつく感触は、ピリピリとして
冷や汗が流れ始める。
明らかに、まずい良くない
俺はどうして、理解しつつ突っ込んでしまったんだ?
分かってはいたはずなのだが、それに突っ込んでしまう冒険心があったわけではない
ただ単に、その危険に気づいていながら
真横にいる彼女の存在が、あまりに大きくて億劫になっただけだ。
ということは、もしかして、俺が悪いのか?
絶対そうだ、完全に理解する。
長考する前に、返事をせねば
そうしないと、進まない
ただ、決まづい時間が過ぎていることだけが分かる。
「あ~あの~」
心の中で、出すべき言葉を探すが見つからない
そして、それを後押しするように浮気をしている感が、後ろ足を引っ張ってくる。
正直言って、それがよろしくない
強気にもなれなければ、弱気で居てはいけない。
そんな状況が、心をどんどんと削っている中...
「あの、私、雄太君と付き合っている彼女の水田花ともうします」
いきなり、手をぴんと上げて、自己紹介するように地雷を投下する、彼女
まさかの、空気読みせずで、驚きを隠せない。
一体どういうつもりなのだろうか?
何か考えがあるのだろうか?
しかし、そうは見えない[むふう]と満足げな顔で落ち着いているのを見る限り。
ただ、それを伝えたかったようだ...
おかしいだろ。
対して、向かいにいる香は、笑顔でいる
その笑顔からは、圧力を感じる。
その笑顔の裏から、ゴゴゴゴゴという文字が見えてくるが
確かに笑顔なのが、怖さを倍増している。
「ねぇ、どういうこと?」
香は、俺に聞いてくる。
俺も分からない
「あ~まぁそういうことです」
彼女である事実は、容認するが、それ以外は詳しく理解していない。
問題は、ほぼほぼなし崩し的なことで生まれているから
それが、純粋に公開できないということである。
情けないこの笑顔...
「でも、昨日までそんな気配無かったよね?」
目から、はっきりとした怒りを感じる。
何故怒られないといけないのか分からない。
ただ、申し訳ない色々なことに対して
委縮して小さくなり続きを話せない。
「ちょっと待ってください?」
「「...」」
この空気感を生み出して、壊すのは花である。
彼女はこの無言の空間に、手を挙げて発言をする。
「杉本さんは、何故怒ってるんですか?」
「え?」
「私、杉本さんが幼馴染ということは知ってます。」
何故知っているのか分からないが...どうやら知っているらしい
「ですが、あくまで幼馴染ですが付き合ってはないはず
もし、付き合ってたら、私も雄太君に告白することはあり得ませんでしたし...」
「でも、それでもおかしい、そんな気配...」
「何か、取り乱してるみたいですが...
ただの幼馴染をそこまで把握するものなんですか?」
「は?」
ドスの低い声が、響く
今まで聴いたことのない声である。
これが、本性だと思いたくはない。
これを引き出してはいけない。
その美しい顔立ちでさえ、今はその怖さを引き立てているようにしか感じない。
男性よりの顔立ちの美女
高嶺の花と呼ばれている美少女がこのように、対峙している空間の間に立つという
俺は、ものすごい立場だと感じる。
有無を言わさない空気がそこを中心に形成されていく。
そんなところに...
「うっす~」
なんとも気が抜ける感じの挨拶で、何も知らないハジメが教室に入ってきた。
「「「...」」」
俺の横に花、向かいに香
その後ろに一が現れ...
「なんだ、どうかしたか?」
理解できない現状に困惑の声を上げる。
しかし、その声が普段のように掻き消えることはない。
[キーン コーン カーン コーン]
チャイムが鳴る音が、教室に響いた。
それと共に、教室はザワザワとなりはじめる。
『どうするんだ?』という空気感が漂いつつも。
花は、仕方ないという様子で、クラスから立ち去る。
「おーい、香
いつもの奇麗な顔が、崩れとるけどどうしたん?」
空気を読むべきはずところで
この冗談を噛ませるのが、ハジメの良い所だろう。
なんとなく、皆が求める魅力に気づく。
「遅かった...」
香が、小さい声でつぶやくが、その声は俺の耳には入らない。
「どうするんだこれ...」
俺の中で、今日中にいくつも変わったことを実感した。
そして、花との関係が生み出すトラブルを理解し始める。
恐らくすべて放棄できないものだと受け入れて進む必要がある。
こうなると思ってなかったと言えないので、ただ溜息を一息ついた。
分かってはいたが、今日付き合っている事実というのは、確実に周知されてしまった。
隠し通す気は、無かったが
ここまで、大々的にするつもりもなかった。
これにより、謎の対立も既に起きている。
「ほんとに、どうするんだこれ...」
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