二話目

「千鶴さん。誰にラインしてるんですか?」

 まだベッドの中で眠そうにしながら、美紀は私にそう言った。

「ん? 彼氏よ、彼氏」

 返ってくるのは早くても三十分後くらいであろうラインを閉じて、彼女と向き合う。

 端麗な顔立ちをしている。昔陸上をやっていたといっていたが、らしいスラッとした輪郭に、少しボーイッシュな髪型。まつげは長く、唇は淡いピンク。

「彼氏……、ですか。珍しいですよね、千鶴さん。彼氏がいるのに、こんなことをしてるのって」

 体つきは力強そうなのに、顔を見ると儚い。

 とても、とても綺麗な女性だ。男性に汚されるのはもったいないくらいに。

「まぁ……、そうでしょうねぇ。あっちも好き放題やってるし、お互い様よお互い様」

 そう言いながらベッドを出ようとすると、腕を取られる。

「なんか。昨日あったばかりの私が言うのもなんですけど。……ちょっと嫉妬です」

 何この子。超かわいいんですけど。

「なぁに、どうしたの?」

「…………」

 目を伏せて、じっと私の腕を強く握る。

「ふふっ。いいわ、時間も少し余裕あるし。昨晩の続き、しましょうか」

 決して満たされない私の欲望。

 それを私は、必死で満たそうとしている。

 ラインの返信に気づかないくらいに、必死に。 

 恐らく。貴方も……。

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