第29話 対決!

「シュリナ様、あそこに見たことない植物があります!」

「シオン、あの草むらの陰に魔物がいます!」


 ふたりとも楽しそうである。かくいう僕はというと、深い森は足場が悪くアイギスと僕の同時操作がきつい! 油断しようものなら盛り上がった根に足をとられて転んでしまう。


 ふぅー、ふたりとも好きなことに集中しているおかげでアイギスが転んでもバレないから助かる。それに動き回ってる分、進みも遅いからね。


《この場所、ものすごい数の精霊じゃな。敵意はないじゃが監視されているぞ》


 サムゲン大森林──

 昨晩、シュリナが教えてくれた。サムゲン大森林は誰の領地でもなく領主もいない菱形の土地。

 この世界では領地の奪い合いは問題ないとされているが、唯一不可侵条約が締結されている場所なのだそうだ。


 言い伝えられているのは、 ──土地が領主を選ぶ── ということ。


「今日はこの辺で1泊しましょう。私はこの美しい『ゼラマモル』を焚きますね。魔物避けの効果があるんです」

「シュリナ様、そんなことしないで襲ってきたのをどんどんやっちゃいましょうよ」

「シオンさん、夜はゆっくり休みましょう。魔物が襲ってきた時はよろしくお願いします」

「任せて下さい!」


 シオンの笑顔が眩しかった……。と、いうことで僕は寝床を作っている。まさか前世でのキャンプ知識がこんな所で役に立つとは思わなかったよ。


 大きな葉を組み合わせて屋根を作って……太めの枝を弦で縛って……っと。

 寝床を作っているあいだ、シオンさんとシュリナさんが夕飯を作ってくれていた。


「凄いです、リッパンエダノキの枝とシッカシバレルグサの弦を使って骨組みを使って、オオバカコノハハの葉で屋根を作るなんて凄すぎます! こんな方法があるなんて」


 良く分からない。というかこのシュリナって子、植物に詳しすぎないか。


「ハイ、夕飯出来ました。肉だけじゃなくって野菜もありますよー、シュリナ様が作ってくれました」

「シオンが肉を、わたしが野菜を採ってそれを料理したモノをアイギス様が作った家で仲良く食べるのって楽しいですね」


 僕たちのコンビネーションは素晴らしい。ただ、この場所で唯一役に立っていない物……それは僕、いや正確には本体。

 動いているのはアイギスだし家造りに集中するあまり本体を動かして無かった。アイギスを動かしてはいたが、なんだか分からない罪悪感に襲われた。


《それなら蜘蛛糸で縛ってやればよかったじゃろうに。まぁ。それ以上に我は何もしていないがな》


 シュリナとシオンは欲望に忠実なまま狩って刈る。そんな旅は数日間続いた。


「みなさん、例の場所に到着しました。サムゲン大森林にある『時の広場』です」


 円形に広がる場所、中央には、正八面体立体的な菱形が中空に浮いている。これは……ウルドを解放した時に触れたものに似ている。


《これはベルダンディーじゃか……》


「良く来たの、アイギス殿」

 

 正八面体の陰から出てきたのは、「族長!」 


「それではアイギス殿、始めましょうか」

「えっと、どういうことか分からないのですが……」

「鬼族はサムゲン大森林を守る種族のひとつ、4にんいる時の女神を知る者に与える試練だと思ってもらって良い。もしかしたらお主は、図書館で見た本に引き寄せられたのかもしれんの」


 族長51と戦って勝てるのか。アイギスを動かしたまま到底勝てるとは思えない、寝かせておくか……いや、感覚が共有されているということはそっちを攻撃されたら終わりか。じゃあ異空間に収納するしか……

 ただ、異空間に命ある者を収納できないのが常識、そんなことをやったらおかしなことなってしまう。

 

「待ってください。本気で戦えるように準備させてください」

「うむ、良いだろう。冗談ではないということを理解したからこそ出る言葉ですな」


《我がその体を預かろう。ただし死者蘇生は切れてしまうがの。戻すとなるとまた最初からやり直しじゃ》


 折角経験を積ませてきたのを勿体なく感じる。が、ここで『時の女神』を逃そうものなら次のチャンスがいつ訪れるかも分からない。それに、同時制御を練習してきた日々は無駄にはならない……プライスレスな時間だ!


「頼むよウルド」

《分かったのじゃ》


 族長の眉がピクリと動いた気がした。


 僕の体から何かが抜ける感触……神経が中空を通ってアイギスに繋がっているかのような感覚……すべてが抜けた時、アイギスと共有していた5感は全て失われた。


「アイギスさん、その姿は……」


 3人の視線がアイギスに釘付け。そこにいたはの褐色の肌、シルバーのロングヘアー、額の『▼』マーク。ナイスバディーな体型を強調するようにあしらわれた服の女性。これは3頭身だったウルドがサイズアップした姿だ!


えっ、ウルド?キューキュー


 しまったー、僕が発するのは鳴き声だけ、言葉が通じないじゃないかー。(ヘンゲハ フウイン サレテルシ)


「久しぶりの体じゃー、そこの族長とやら、主の相手はこの蜘蛛レオンじゃ。良いな」

でもなんでウルドが入ったらキュー・キュー容姿が変わったんだキュー

「この体のせいじゃな、ルミナもそうじゃったであろう、元の精神に引っ張られるのじゃ」


 とりあえずこの場をどうおさめるんだ。


「我に任せるのじゃ。主の中にずっといたでな、心が読めなくても考えていることぐらいは分かるぞ」


 ウルドは、手を振り払うと突然に何もないところが爆発しクレーターを作った。巨大な音から逃げるように鳥が飛び立ち獣の声が遠くなっていく。


「主ら、ここで一旦しまいじゃ。これから鬼族の族長と蜘蛛レオンの戦いをするでな。族長はとっとと責を果たすのじゃ」


「あなた様は一体……今の爆発、中身は入っていなかったと言え常人に成せる技とは思えません」

「主の話しは聞かぬ、それでは戦いを始めるのじゃ」


 先手必勝、粘化糸を放出して族長の拘束を狙う。

 族長は瞬歩を使って上空に脱出。さらに上空で瞬歩をつかって軌道を変えると一気に間合いを詰めてきた。


 カッキーン── 鋼化針でガード、そのまま粘化糸を放出する。それを族長は瞬歩で避けて間合いを取った。


 族長ずるい、リキャストタイムなしで瞬歩を使うなんて……極めればそこまでできるのか。しかし、スキルの連発は技の源である魔粒素を早く消耗する。


──ハイ、ここでウルドが解説するのじゃ。魔粒素はスキルを使う時に消費するエネルギーなのじゃ、ダメージを受けると減少する気粒素というのもある。簡単にいうと気力みたいなものじゃな。気粒素はHPじゃないので、切られれば普通に痛いし死ぬから気を付けるのじゃよ──


 それならスキルを温存して得意の疾さで相手をかき回すしかない。パワーに置いては族長の方が断然上だ。


 なんで族長は瞬歩を多用してくるんだ。気を抜いたところに詰められてあのパワーで切られたら一撃でやられてしまうだろう。しかし、あの攻撃を受ける気もしない。


 瞬歩で対抗しようにも僕の方がスキルレベルが低い。あと出来ることは糸をどう活用するか。


 そうだ! 粘化糸を放出し移動を続ける。移動すれば移動するほど糸が網目のように紡がれる蜘蛛糸地獄だ。 (オモイツキ ノ ナヅケダケド)


 体が小さい分避けるのは余裕、アイギスを同時制御してたおかげか視野も広がっている。


 かかった! 族長の脚を粘化糸がからめとった。


 これでどうだ! 網化糸に麻痺を隠匿して発射、全ての手から包むように放出して逃げ道を潰す。そして更に鋼化糸を放出、麻痺糸を避けたとしても動きを止めるくらいは出来るだろう。


「かかったな」


 「百烈の型」の言葉と共に族長に絡みつく粘化糸は切り裂かれ、目にもとまらぬ速さで麻痺糸を霧散させた。トドメをさすべく既に突っ込んでいる僕。


 あぁぁぁ、ヤバイ。鋼化糸を持っただけの僕が族長に突撃しているのであった。


===

おまけ:ステータス情報

        気粒素 魔粒素 攻撃力 防御力 魔力 速度

パイリン:LV51  275  79   151  75   27  53

蜘蛛レオン :LV30  172  172   68  40   80  124

シオン :LV28  132  58    70  35  15  30

シュリナ:LV21   83  65    50   25  43  17

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