第30話 現在神の開放

「まさか鬼族に勝つとは思わなかったのじゃ」


 そう、僕は勝利したのだ。鋼化糸を持ってツッコむだけだった所からの大逆転!


〇。。。

 瞬歩を使ったところで跳ね返されるだけ。族長は僕が仕掛けるのをジッとまっている、糸に何かを付与したところで意味はないだろう。


 それなら──死者蘇生──。霧散した麻痺糸の復活、予想外の展開に族長の反応が遅れ、全ての網化した麻痺糸が包み込んだ

。。。〇


 と、いうわけだ。

「うぐ、一体何が……」


 ビリビリしている族長から麻痺糸を回収した。体中に麻痺糸を浴びたせいかなんとか立ち上がれる状態。状況も理解できていないようだ。

 

「主の勝ちじゃな、試練はクリアということで良いじゃろ」

「はい……ワシに本気を出させるだけで充分に資格はあるのです。蜘蛛レオン殿、中央にある碑に触れて下さい」


 ゆっくりと正八面体立体的な菱形に触れた。


ドクン━━


 またか…… 心臓を激しく揺さぶられるような感覚、脳が拡がっていくような感覚。正八面体のオブジェクトから出ている光が僕に繋がった。光は爆発するように大きく破裂すると僕の意識がゆっくりと手放されるのだった。


○。 ○。 ○。


 あれは……一条くん……。その回りにいる神々しい光りはなんだ。


「君たちは選ばれたのだよ。この島にいる全員がとある世界で生まれ変わることになる。その割り振りを君が決めるんだ。なんでもいい、君の望む生き方を皆に与えなさい」


 消え行く光……ここは僕たちが最後に見た島か……


「俺は世界最強の人間になりたい、誰にも負けない力を持った人間にな!」

「あの突き落としてやった蔭キャは調子に乗って俺をムカつかせたからな、不幸な星の元に生まれ不幸なままに人としての人生が終わる的なのがいいな」

「あの真面目ちゃんは、レアキャラだからな。転生したらレアだけどすっごいレベルが低いやつにしてくれ」

「あいつは、めっちゃ守護神的な……盾を使わせたら右に出るもの無し的な」

「あの子は、アイドル級に可愛くしてくれ、そして俺と出会って結ばれる運命だ」

「あの時、何も動かなかったやつらは適当に割り振ってくれ、めっちゃランダム。ひとりかふたり位は大アタリをいれてくれ」


 臨海学校参加者ひとりひとりの処遇が一条によって決められていく。ブツブツと声が聞こえなくなって……今度はなんだ場面が切り替わった……神々しい光りたちが集まっている。


「あいつは面白いおもちゃになるよ。自分の欲望のまま相手の転生先を決めてやがる」

「どうするんだ。叶えてやるのか」

「そうだな、適当にやるよ。暇が潰せればどーでもいいからな……」


○。 ○。 ○。


《進化条件を達成しています、進化しますか? → はい / いいえ》


 なんだこれ、前に進化してからレベルが上がった記憶がないんだけど……何が条件だったんだ。


《進化条件は2つ、ひとつは特殊スキルを2つ以上獲得すること、もうひとつは規定レベル以上であることです。こちらは試練を達成したことで得た経験値によって達成しました》


 なるほど、それならこれは偶然ではなく必然! 進化でお願いします!


《進化対象は1種類、アラクレオンネへの進化を開始します。現在のステータスが基礎値となり新たな係数が適用されます。レベルリセットの上、ステータス・スキルの改変が行われます》


 アラクレオンネってどんな種族なんだ……は! まさか、アラクネ+レオンの混合? でも今までだと最後にレオンという言葉が付いていたけど……。


《レオンの能力が、アラクネに内包されているためアラク『レオン』ネとなります》


 随分と天の声がフレンドリーに教えてくれるようになったな。


《アラクレオンネレオンの固有スキル、『スキルメディウム』を獲得しました》

《アラクレオンネレオンの特技、『機織はたおり』がLV.10 (MAX)を獲得しました》


《スキルの改変により、所持スキル『変化』がLV.5となりました》


《最上位種となったことで、『共通言語』LV.10(MAX)を獲得しました》

《最上位種となり必要条件が達成されましたので『系譜』の作成が可能となりました》


《過去神との信頼により、『死者蘇生』のLVが最大となりました》


《アラクレオンネへの進化が開始されます。処理中は休止状態となります。予想処理時間は24時間です》


 あぁ、今回はちょっと長いな……《大丈夫です。わたしがきちんとサポートしますから》


 えっ、君は誰…………◯。 ◯。 ◯。 


「セレン王女、こちらです」


 可愛い子だなぁ……王女って……随分と慌ただしいけど……。


「セレンさんにまで迷惑をかけてしまって申し訳ありません」

「何言ってるんですか、王女は私たちの象徴なんです。国のことは王に任せてしばらくここに身を隠しましょう」


 セレンと呼ばれる騎士、白く美しい甲冑を纏ったカッコいい女性。


 ──あれ? シーンが変わった。ここは……お城か?


「王よ、セレン王女をきさきにいただく件は考えてもらえたでしょうか」

「そうは言われてもセレンが婚姻は早いと嫌がっておってのぅ。待ってはもらえぬか」

「ヨツノオオガに同盟を破棄されたダルメルカを助けたいと思っているんですよ。勇者の育成もしていますしお早い返事をいただきたいんです」

「うむ……すまんが、もう少しセレンを説得する時間をくれんか」

「分かりました。私も無理強いはしたくありません。せめてお茶の機会くらいは作ってくださいね。それでは」


 何者だあの男、随分とすかしてるけど ──って今度は……どこかの個室か。


「お前ら、まだセレンは見つからなんのか。この国を救うにはノブナガ公にアレを返却してもらうしかないのだぞ」

「ハッ、剣聖殿が連れ出したものと思われます。国中の兵を動員していますので時間の問題かと……」

「なんとしても国民にバレる前に取り返すのだ」


◯。 ◯。 ◯。 


 また変な夢を見たなぁ……。


《あら、お目覚めですか》


 ウルドの時みたく脳内に声が聞こえる。茶色みがかかったシルバーの美しい髪、神のような服装の女性……って、あれ? この人、3等身だけど夢で見たお姫様にそっくりだ。……違うのは額にある『◆』くらいか。


《開放していただいた現在神のベルダンディーと申します》


 ベルダンディー? ウルドはどうしちゃったんだろう。


ウルド姉さんなら体を手に入れたと喜んでおりました。石碑の場所にいると思います》


 そういえばここはどこだ? って、なんか立派な建物ができてるけど。


《時の女神・現在が解放されたことにより、『或るべき姿』を取得しました》


《あなたのお体をお借りして作らせていただきました。わたしのもつユニークスキル『或るべき姿』を使って》


 『或るべき姿』? ってウルドの死者蘇生みたいな特別なスキルってこと?


《はい、使用者の思い描く現在いまの或るべき姿に変えてあげることができます。よければ試してみて下さい》


 体は十分に動く、建物を出て一本の樹木に手を当てる。


『或るべき姿』── 樹木の一部がくり抜かれ、イメージした姿へと変わる。 (イメージ ドオリニ ヘタスギルケド)


「お前は誰でござる」


 凄むような声を出し剣を向けるシオン、一体何を言っているんだ! って、ゴウシュウアンドレオンってやるからアラクレオンネという種族に変わったから分からないのか?


「僕だよ、蜘蛛レオんだよ?」

「何を言っている、蜘蛛レオンはその手に持つ人形だろう、もう一度聞く、お前は何者だ」


 なんで分かってくれない? って、今、シオンと会話しなかったか?


《レムさんは蜘蛛レオンとしての最終進化を遂げ、人形ひとがたになったのです》


 なんだってー! そういえば普通に歩いてたよ。アイギスの感覚が残ってて全然分からなかったー! って、レムって何だ??


 

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