第24話 飼い主とペットの立場
──
ファザリア王国だけでなく全世界に通告された世界法令。
各国は自国の実情に合わせて
ファザリア王国は、飼い主となる種族を人族とし、それ以外なら獣だけでなく他種族もペットとして登録可能とした。
この法令は各国で問題となっていたペットの野生化や魔物化を防ぎ、使い捨てを御するための措置であり、各国の実情に合わせて対応できるようになっていた。
施行から数年後、この法令が奴隷制度の先駆けになったのだが、それはまた別の話しである。
このように全世界で施行される法令は、『ヘクセンナハト』という会議に集まった各種族の
どこに集まり、どの種族が参加して、どう決定しているのかは極秘事項となっており参加者以外に知る
この法令ではペットが登録されると持ち主との間に繋がりが作られる。
盗んだり危害を加えたりする行為には重い罰則が科せられ、人族にとっては大切なペットを守る盾となるが、人族以外の種族にとって
「聞いてくださいよアイギスさん、この法令ってひどくないですか」
目の前にいるのはマリアナ、いつものようにフラッフルンとして
「ペット好きな君がそんなこというとは思わなかったよ」
「おかしいと思いませんか、種族によって上下を決めるなんて……フラッフルンやイッヌやネッコのように人に飼われる進化を遂げてきた動物じゃない種族までペットとして認めるなんて」
マリアナは手に持っていたコップを激しく置いた。中に入っていたミルクティーが激しく揺れて周囲に
「まぁまぁ。強制的にペット登録できるわけじゃないみたいだし。お互いの同意が必要なんでしょ」
「考えても見てください。もしメロディーちゃんが何者かに盗まれて登録されちゃったらその人のものなんですよ」
うーん、確かに盗んだら罰になるけど、持ち去られて登録されてしまったら罪に問えなくなるって話だしなぁ……。
その後もマリアナの愚痴を聞き続け、彼女が満足するまで付き合った。
「そういえば、マリアナはペット登録をしないの?」
「あれ? 言ってなかったでしたっけ。私、人族じゃないんです」
思わず本体でマリアナの顔を見てしまった。
「あらメロディーちゃん、やっぱり言葉が分かるのね」
優しく撫でられる。この極楽に連行されるナデナデが恋しくてアイギスを使って散歩……いやいやいや。同時制御の練習に出ているのだ。
《主も強情よのぉ》
「人族じゃないって?」
「言葉の通りよ、私は獣族なの。それだけが理由じゃないんだけど高等部にも行ってないの、平民だしお金もないからね……あなたと同じよ。聞いたわよあなたのこと」
アイギスのことを聞いた? 一体僕の体はどんな人間だったんだ……。
「獣族って、じゃあ何かの獣に変わることも出来るの?」
「えっ、えっ……ごめんなさい……その顔は言葉の意味が分からないのだと思うけど……」
マリアナは頬を赤らめ腿の上にいる僕をアイギスに渡すとソサクサと走っていってしまった。
えっと……何があったんだ?
《獣族にとっての獣姿は本当の自分なのじゃ、つまりそれを聞くということは君のすべてを共有したい……転じてプロポーズじゃな》
「えええええ! それは知らなかった……僕はなんてことを」
周囲の視線が一気に集まる。ものすごい恥ずかしさが押し寄せてきた。昔の記憶……ボッチで女の子に話しかけられなかった自分と重なってしまう。
《大丈夫じゃろ、彼女も知らないで言ったと分かっておったようじゃからな。それよりも主もペット登録しておいた方が良いんじゃないか。
「まっさかー、そんな簡単に盗まれる━━あっ、メロディーを連れて行かないでー」
大きく叫んだ。……いや逆だった、連れていかれたのが本体だ。だから、僕を連れて行かないでーか。
《何をふざけておるのじゃ》
蜘蛛糸を伸ばして足を縛った……同時にアイギスを走らせる。ローブを纏っているせいで容姿は見えないが、頭上の26という数字とこの胸は……ユウノを刺した犯人?
派手に転んだ盗人は
騒ぎを聞きつけた
「大丈夫かい? 今はペットを連れてその辺を歩いていると危ないからね。君もさっさとペット登録した方が良いよ」と、もう一人の
◆ ◆ ◆
なんといってもアイギスの視界が良すぎるので、ついそちらの感覚を優先してしまう。
「やっぱり蜘蛛レオンの体を優先しないとなぁ……でもフラッフルンの姿じゃ安心して歩けないし」
フラッフルン以外に
《主は本体に集中できるようになった方が良いぞ、この先、戦いになった時にどちらを優先するのか的確な判断が出来なくなるじゃろうて。今の主では格下にしか勝つことはできんじゃろう》
悔しいけどウルドの言う通り。時の女神を探す中でネフィリムみたいな強者との戦いは避けられないだろう。もしネフィリムと戦ったのが今の僕だったら勝てただろうか。
「決めた! 僕をペット登録して、しっかりアイギスを操れるようになるよ!」
《それが良い、今の主は誰かに操られているようじゃからのう》
一気に起き上がってメロディーを抱えた……いつの間にか『メロディー』という名前も定着してしまったし、走る僕の
「並んでるなぁ」
ペット登録が行われているのは公堂、首都マイアサウラを区分した1区に1個ある市役所的な場所だ。
ほとんどの人はフラッフルンやイッヌやネッコを連れている。どこの世界でも一緒、爬虫類や両生類のようなペット、オオカミや熊のような生物を連れている人もいる……
あの熊みたいのヤバいんじゃない。人よりよっぽどレベルが高い……見た目も怖いから周りも震えてるじゃないかー。
「次の人ー」
ペット登録と言ってもなんてことはない。飼い主登録された魔法のリングを首につけられるだけ。伸縮自在で苦しくも無いし、飼い主が解除すれば色が抜けて取り外すことが出来る優れもの。
付け替え対策として一度外すと特殊効果を失う機能まであった。
アイギスを異空間に収納して久しぶりの一人歩き、考えてみれば街中を自分だけで歩くのはこの姿になって初かもしれない……まぁ、フラッフルンの姿だけど。
「あらメロディーちゃん……」
マリアナに秒で見つかった。笑顔で僕を抱きかかえると「一緒にお話ししてもいいかしら」と一瞬だけ見せた悲し気な顔に頷いた。
ベンチに座るマリアナの腿に乗せられる。彼女はいつものように極楽に連れられるナデナデを繰り出すと静かに話し始めた。
「私、この世界に住む種族は平等であって欲しいと思ってるの……私は獣王国ビブルアントに住む父とこのインフェルザン王国に住む母の間に生まれたの……母はとても優しかったの……」
マリアナは自分の生い立ちを語り始めた。
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